連載小説
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「お話」26.
「『戻って…来なかったじゃないですか……
戻って来るって…約束したのに…』
私は小さく呟いて、二つ目の手紙を開いた。

【松崎さんへ

戻って来るって、約束してたのにな。
ごめんな。

松崎さんが泣いてるって俺も知ってる。
だからもう強がらなくていい。

無理…すんなよ。

齋藤 光希】

そう…
何かあったら必ず…
『無理するなよ』って声をかけて
心配してくれた……

私はどんどん手紙を開いていく。

【奇跡なんて俺は信じられない。

あの手紙、書いてるときも、もう駄目だなって思ったんだ。
みんなは希望を捨てるなって
きっと奇跡が起きるって
そう励ましてくれていたけれど

自分ではちゃんと分かるんだよ。
その瞬間が近づいているって。

それでも、『きっと戻ってくる』なんて書いた俺も、
人のことなんて言えないな。
俺だって、強がりたかった……】

【今になってわかるよ。
みんなが俺のことを大切に思ってくれていたって。

生きてた頃は実感しなかったよ。
俺がいなくなったら、悲しんでくれる人がいるなんて、思いもしなかった。】

【いつだったか、俺は訊いたよな。
生きる意味とは、なんなのか……

死んだ今になって、なんとなくわかった気がする。

理想を叶えるために、
夢を追いかけるために、
一生懸命にもがいていくのが人生なんだ。

そしてなぜそうするのか、
その理由をを探すために、俺たちは…いや、松崎さんたちは生きている。
そう思うようになったよ。
あの時の松崎さんの答えも案外間違いじゃ無かったのかもな。】

一つ一つの手紙はとても短いものだった。
便箋一枚に綴られたメッセージは
懐かしい日々を思い起こさせるようだった……」
14/06/30 22:10更新 / 美鈴*
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