連載小説
[TOP][目次]
着信〜山吹〜
拓実side


僕は同じ部活の上森先輩と一緒に歩いていた。
同じ山吹色の服装。
適当に振り分けられた割には、同じ部活の人が多い気がするのは気のせいか…?

「どーしたの?大山君」
「いや、何でも。」
「この世界は結構危ないから気を付けてね〜トラップだらけだし、下手したら……あぁやっぱり言わない」
「…ありがとうございます。」

はっきり言って、こんなイベント、必要ないと思うんだけどな。
団結力を育むとか聞いたけどさ。
みんなバラバラで行動してるのに、団結力も何もないんじゃないの??

そりゃ一部の女子は
「好きな人と一緒になれるかも!!」
とか言ってさ。
あわよくば好きな人に助けてもらおうなんて考えてるんだろうな。
だからこのゲームは女子に人気があるんだと、上森先輩から聞いた。

……そう言えば奥村も、そんなことを言ってたな…。
誰なのか聞いたけど、適当にはぐらかされたし……。

小原もそんなことを言ってたな。
誰なのかはもう分かってるけど。
あっちも今ごろ楽しんでるのかな?
二人きりで……。

ピリピリピリピリ!!

「うわっ!?」
いきなり通信機の着信音が鳴り響いた。僕はすごくびっくりして、思わず大声を出した。
……上森先輩に笑われた。
「拓実君びっくりしすぎ〜
このゲームではしょっちゅうこれ鳴るんだから、ちょっとは慣れなよ〜」
「………はい。」
……なんかすごく恥ずかしくて、僕は少しうつむいた。

その頃……

大希side

ピリピリピリピリ!!

着心音がけたたましくなり響く。
他の連中と繋げたままにしてあるせいか、音がハウリングって言うのかな?
すっごく気持ち悪い。
そして通信機から「うわ!」だの「きゃー!」だの聞こえてくるのは、きっといきなりの着信に驚いた一年生の声なんだろうけど…

「ぅえっ!?」
どうやらこちらも例外ではないようだ……
しかも「え?え???」とか言って辺りを見回す始末。
……ルール、ちゃんとわかってるのか……?

「あのさ、小原さん。」
ぽん、と肩に手を置くと、
「は、はぃっ!?」
異様に慌てる小原さん。
おいおい。慌てる必要がどこにある??
まだゲームは始まったばかりなのに……
俺は、苦笑いして言った。
「…そんな、緊張しなくていいしな?」
小原さんははっとして顔を真っ赤にして。
「………すみません…。」
「いやいや謝る必要ないから。」
そう言って、俺は着信メールを確認した。
14/05/22 18:58更新 / 美鈴*
前へ 次へ

TOP | RSS | 感想 | 目次 | メール登録

まろやか投稿小説 Ver1.53c