連載小説
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side...翼
梨桜はよく笑う。むしろずっと笑ってる。
あいつは他人に涙を見せた事なんか、一回もない。
でも俺は知ってる。梨桜は何を言われても折れないから皆は強い奴だって思ってる。
でも違う。梨桜は一番強そうに見えて、一番弱いんだ。
小学校の時だった。一ヶ月くらい梨桜が学校へ来なかった。
そして、梨桜が学校へ来なくなった理由を先生から聞いた。

梨桜の親が交通事故で死んだんだ。

梨桜はその車には乗ってなかったらしい。
親がいないから、児童養護施設に預けられそうになった梨桜を育ててくれたのが、
今の梨桜のお父さんと、お母さんだった。
梨桜が、学校に久しぶりに来た時だった。確か名前は……荻原大地だったかな?
大地が梨桜に爆弾を落としたんだ。

「お前の親交通事故で死んだんだってなー?かわいそうだよなー。だって俺らはこれから先だって実の親に愛してもらえるのに、お前はもう愛してもらえないんだぜ?」

梨桜が涙を一粒こぼしたのを合図にするかのように俺の足は地面を蹴り飛ばしていた。
大地の顔面に本気で一発拳を入れてやった。
「梨桜に謝れ。なんでお前が偉そうに上から目線で物を言ってんだよ。お前が謝らねーなら、俺だって親が来たって、死んだって、お前の顔面殴ったこと謝んねー。」
そう言うと大地は「事実を言っただけだから謝んねー」って言った。
俺は頭にきて、大地の胸ぐらをつかんで耳元でこうささやいてやった。
「お前が出した答えがそれなら別にそれでいー。一生後悔し続けろ。でも、もし次梨桜がお前の放った一言で泣いたら、顔面を殴るだけじゃすまないからね」
大地の顔は青ざめてた。そんなのを気にも止めず俺は梨桜のもとへまっすぐ向かい、
小さくまだ震えてる梨桜の肩を支えながら、教室から出て行ってやった。

「ありがとう」梨桜はそう言った。
この時から俺は心から誓った。

絶対に梨桜を泣かせない。何があったって、梨桜の側にいることを、そして守ることを、心から誓った。

梨桜は高校に入っても、すごく目立ってた。梨桜の場合、京香みたいな美人要素はない。でもあいつは人形なのかって思っちゃうくらい、可愛い要素がある。だから、守りたくなっちゃう。おかげで、梨桜は入学式当日に3人もの男子の同級生と先輩に、
告白されていた。
でも実は俺も梨桜のことが好きっていうのは誰にも言わないでおこうではないか。
15/03/02 16:38更新 / 椿
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