連載小説
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ねこのみるゆめ。3.
ここは、三階の少人数教室。
普段は誰も使っていない、空き教室。
たまに二年生がそこで勉強したりするけど、それも週に一回ほど。

そんな教室で、俺らはまた二人きりで、話をしていた。



『あー…疲れた…』
言葉の通り、精神的にものすごく疲れた様子の松澤さん。
だらーんとした姿勢で椅子に座っている。
『確かに楽しそうだったな』
笑いながら、俺は言った。
『楽しくはなかったです』
ちょっと怒ったように、松澤さんはため息をついてから言った。

『…で、誰ですか??』
『…だからそれは訊かないでくださいっ!
というか、じぇんとる先輩って呼ばれてる位ならそんなに人の事情に深入りしないでくださいよ!!』



何があったというのか。
それを説明するには、何時間か話を遡らないといけないんだけど…
生憎俺はあの場にいなかった。
だから、正直よく分からなかったんだ。

俺が知ってる限りのことを話そう。
まぁ松澤さんに聞いたことが多いけれど。

今朝。今日は土曜日で、朝から部活。
俺は、とある理由で部活に遅れた。

…とある理由でっていうか…

正直に言おう。

寝坊した。

朝に弱いんだよな…俺。

まぁともかく松澤さんには悪かったと思う。

本当は、俺の他にももう一人、二年生がいる。
ホルンのリーダーの女子。

……その子も今日は休んでいた。

後々松澤さんに聞いたんだけど、どうやら風邪を引いたらしい。


…という訳で、今朝は松澤さん一人だった。
トランペットの人達に、一人じゃ寂しいでしょ、とか
一年生だけじゃ心配だよ、とか
いろいろ理由をつけて、同じ部屋で練習しようと誘ったらしい。

松澤さんは、トランペットの人達と同じ部屋で練習することになった。

…まではよかった。

ここから詳しくは教えてくれなかった。

けど、二時間ぐらいして俺がやっと部活に来たら、部屋の鍵がおいてあって、松澤さんがいなかった。
ひたすら探し回って、トランペットの部屋の前に来てみれば。

中でキャーキャー騒いでる。
まだ眠気が取れてない俺は、朝から元気な女子たちだなと、心の中で呟きつつ、ドアをゆっくりと開けた。
部屋にいる人達は、俺の存在に気がつかない。

『松澤さん知らな……』
部屋に入って、そこまで言った時、何かがぶつかってきて、俺はホルンを持ったまま後ろに倒れそうになる。

…なんだよっ!
心の中で悪態をついて、ぶつかったものを見てみれば。
『すっすみませんっ!
あ……おはようございます、先輩。』
あわてて謝った後に、俺だと分かると少しほっとしたような顔をした、松澤さんだった。

『あ、そうだ!』
トランペットのリーダーが何か思い付いたようだった。
そして、俺に問いかけた。

『松澤ちゃんの好きな人、知ってる???』

はあぁ!?
そんなの知るかよ。
松澤さん、こういう話には興味無さそうだし、あまり話してくれないからな…。

あ、でも。
中川君と話してる時とかけっこう楽しそうだよな。
でもこれをこの恋バナ好きな連中の前で話せば…松澤さんがかわいそうだな。

『そういうのは、俺は興味ないから知らん。』

とりあえず、言い逃れしておく。

『…とりあえず。俺も来たことだし、ホルンの部屋に行くか』
そう俺が切り出せば、
『はい!』
ものすごくほっとしたような顔をした松澤さんが、返事をした。


まぁでも、これでなんとなく予想ついたな。
松澤さんは、あの恋バナ好きの4人にたかられて質問攻めになってたんだろうな…
うわぁ、かわいそう。

で、詰め寄られたから引いて、
押されて引いてを繰り返して
ついには走り出して…

で、俺にぶつかったと。

だいたいそんなところだろうな。


そして、前に戻る。


『…で、誰ですか??』
わざと丁寧な口調で、笑いながら聞いてみる。
『…だからそれは聞かないでくださいっ!』

『いるんだろ??誰??』
『だからいませんっ!』

あはは。
松澤さんったら、焦る焦る。

それじゃ、いるって言ってるのと同じだぜ?
そんなだから、あいつらに問い詰められるんだぞ??

『第一、先輩はそういう話には興味ないって…』
『でも同じホルンの後輩だったら興味あるな〜聞きたいな〜知りたいな〜』
言い逃れしようとしても無駄。
実は俺もそういう話は結構好きなんでね……

あーだめだ。
なんか笑えてくる。
楽しすぎる。
松澤さんをいじるの楽しすぎる。

『うー酷いです…』
『ははは…俺は元からそういう人。』

つか俺、かわいそうとか思っときながら、結局あいつらと同じことしてるじゃないか!

…まぁいいか。
先輩だし☆
…ってあいつらも一応先輩か。
14/06/28 01:20更新 / 美鈴*
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■作者メッセージ
「ねこのみるゆめ。」第二弾です。

話が急に変わって混乱しますよね。すみません。

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