「お話」7.
「その、次の日。
その日は、土曜日だった。
私は、いつものように、部活に行った。
お葬式に誘われた。
けれど、私はそんなのに行ける気分じゃなかった。
けれど、親も行ってこいって言うし…
結局、日曜日にお葬式をすることになって。
今日は何もないから、とりあえず部活に来てみた、ってわけ。
楽器庫に楽器を取りに行ってみれば。
先輩が、少し前まで吹いていた、先輩のホルンが。
いつも通り、置いてあって。
それを見た私が泣きそうになってた時に……
ぽん、と、肩を叩かれた。
振り返ってみると、後ろには、齋藤先輩と仲が良かった、山脇先輩がいた。
『……え?』
私は、ものすごくびっくりした。
いくら、私のいるホルンパートと仲がいいパートにいる先輩でも、あまり話した事がない。
だって、山脇先輩は、いつも齋藤先輩と喋ってばかりだったから。
だから、すごくびっくりして。
そんな私に、山脇先輩は紙を差し出して、一言言った。
『……齋藤から。松崎さんに、渡してくれって、昨日頼まれた。』
『…はぁ。』
若干疑いながら手紙を受け取った私を見て、先輩は言った。
『…中身は見てないから。』
…そういう問題じゃないんですよ。先輩。
『…ありがとうございます……。』
とりあえず、手紙を受け取った。
…けど、読む気になれない。
齋藤先輩からの最初で最後の手紙を、どうしても開く気にはなれなくて。
私は、それを自分のロッカーの中に、そっとしまった。
その次の日の事は、覚えていない。
ひたすら泣いて泣いて……
それだけしか、覚えてない。
その、次の日のこと。
齋藤先輩の死は、全校に知れ渡った。
最も、一部の人にしか、誰のことかなんて明かされていない。
私を含む、齋藤先輩を知る人たちはみんな、重い空気に包まれていた。
そんな中、沈む生徒をからかう、事情も知らない男子もやっぱりいるわけで……
特に私は、前と態度が一変したのと、前からクラスで少し浮いていた存在だったのもあって、余計にからかわれた。
その頃からかな。
私が、周りから恐れられ始めたのは。
きっかけは、そのからかってきた男子に私が言い返したこと。
『松崎、暗い顔して情けねーな!!
事故に遭うようなマヌケな男子が一人死んだぐらいでよ!!』
その言葉に反応した私は、立ち上がって、言った。
『たかがマヌケな男子と仰いますが……
それは、貴方がその人の存在を知らないから言える事でしょう?違いますか?
貴方がその人がどんな人か知らないくせに、マヌケと決めつけるんですか??
そんなバカな貴方達には到底理解できないでしょうね。
きっとバカな貴方達は、【自分にはそんな事起きない】なーんて思ってるんでしょうね。
知っていますか?一年間に何人の人が、交通事故で命を落としているか。
自分の身にもいつそんな災いが起こるかなんて知れないんですよ??
そんな災いがたまたま降りかかってしまった哀れな男子の生徒を、貴方方はマヌケと呼ぶんですね。
たかが男子一人が死んだぐらいで…
そう貴方は仰いましたね。違いましたか?
貴方にとってはなんでもない事なんでしょうね。だって、貴方には関係無いから。
けれど、残された親族や友達はどうなるでしょう?
悲しみに明け暮れ、嘆き続けるでしょう。
交通事故に遭わせた犯人を恨むでしょう。
貴方ならどうですか?
親友が交通事故で亡くなったとして、それでも貴方は同じ事を言えますか?
たかが男子が死んだぐらいで、そう思えますか??
…少なくとも私なら。
そうは思いませんね。』
辺りは、しん……としていた。
『……お前なぁっ……!』
何か言いかける男子を、私の友達はそっと、止めた。
私のこの時の話し方…
相手に何も言わせない、隙を与えない話し方と、相手を黙らせる威圧感、そして、下から上を鋭く見上げられる、このイライラとが悪い意味で評判になって。
そして、私のまわりには。
私の友達のうち、何人かしか残らなかった。」
その日は、土曜日だった。
私は、いつものように、部活に行った。
お葬式に誘われた。
けれど、私はそんなのに行ける気分じゃなかった。
けれど、親も行ってこいって言うし…
結局、日曜日にお葬式をすることになって。
今日は何もないから、とりあえず部活に来てみた、ってわけ。
楽器庫に楽器を取りに行ってみれば。
先輩が、少し前まで吹いていた、先輩のホルンが。
いつも通り、置いてあって。
それを見た私が泣きそうになってた時に……
ぽん、と、肩を叩かれた。
振り返ってみると、後ろには、齋藤先輩と仲が良かった、山脇先輩がいた。
『……え?』
私は、ものすごくびっくりした。
いくら、私のいるホルンパートと仲がいいパートにいる先輩でも、あまり話した事がない。
だって、山脇先輩は、いつも齋藤先輩と喋ってばかりだったから。
だから、すごくびっくりして。
そんな私に、山脇先輩は紙を差し出して、一言言った。
『……齋藤から。松崎さんに、渡してくれって、昨日頼まれた。』
『…はぁ。』
若干疑いながら手紙を受け取った私を見て、先輩は言った。
『…中身は見てないから。』
…そういう問題じゃないんですよ。先輩。
『…ありがとうございます……。』
とりあえず、手紙を受け取った。
…けど、読む気になれない。
齋藤先輩からの最初で最後の手紙を、どうしても開く気にはなれなくて。
私は、それを自分のロッカーの中に、そっとしまった。
その次の日の事は、覚えていない。
ひたすら泣いて泣いて……
それだけしか、覚えてない。
その、次の日のこと。
齋藤先輩の死は、全校に知れ渡った。
最も、一部の人にしか、誰のことかなんて明かされていない。
私を含む、齋藤先輩を知る人たちはみんな、重い空気に包まれていた。
そんな中、沈む生徒をからかう、事情も知らない男子もやっぱりいるわけで……
特に私は、前と態度が一変したのと、前からクラスで少し浮いていた存在だったのもあって、余計にからかわれた。
その頃からかな。
私が、周りから恐れられ始めたのは。
きっかけは、そのからかってきた男子に私が言い返したこと。
『松崎、暗い顔して情けねーな!!
事故に遭うようなマヌケな男子が一人死んだぐらいでよ!!』
その言葉に反応した私は、立ち上がって、言った。
『たかがマヌケな男子と仰いますが……
それは、貴方がその人の存在を知らないから言える事でしょう?違いますか?
貴方がその人がどんな人か知らないくせに、マヌケと決めつけるんですか??
そんなバカな貴方達には到底理解できないでしょうね。
きっとバカな貴方達は、【自分にはそんな事起きない】なーんて思ってるんでしょうね。
知っていますか?一年間に何人の人が、交通事故で命を落としているか。
自分の身にもいつそんな災いが起こるかなんて知れないんですよ??
そんな災いがたまたま降りかかってしまった哀れな男子の生徒を、貴方方はマヌケと呼ぶんですね。
たかが男子一人が死んだぐらいで…
そう貴方は仰いましたね。違いましたか?
貴方にとってはなんでもない事なんでしょうね。だって、貴方には関係無いから。
けれど、残された親族や友達はどうなるでしょう?
悲しみに明け暮れ、嘆き続けるでしょう。
交通事故に遭わせた犯人を恨むでしょう。
貴方ならどうですか?
親友が交通事故で亡くなったとして、それでも貴方は同じ事を言えますか?
たかが男子が死んだぐらいで、そう思えますか??
…少なくとも私なら。
そうは思いませんね。』
辺りは、しん……としていた。
『……お前なぁっ……!』
何か言いかける男子を、私の友達はそっと、止めた。
私のこの時の話し方…
相手に何も言わせない、隙を与えない話し方と、相手を黙らせる威圧感、そして、下から上を鋭く見上げられる、このイライラとが悪い意味で評判になって。
そして、私のまわりには。
私の友達のうち、何人かしか残らなかった。」
14/06/11 23:11更新 / 美鈴*