ポエム
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水色の夢

海に抱かれるよりも、わたし
海をこの胸に抱いていたいの

そうして小高い丘に 君と2人
遠く儚く ユリカモメ  

"いつもの"をバッグから取り出す君
クルッと滑らかに針は回って
果てへと高まる 君の鼓動

「ベルクハイデも港街だったよね?」
「私、昨夜もそこの夢を見たのよ」

灯りに照らされた雪越しに、海が
北国の厳しい海が横たわっている

やはり小高い城に立ちながら君は
暖かい故郷―この場所―を想ってる


君の青春
きらびやかな夢

その端っこくらいなら 僕も
ささやかながら彩ることができたろうか


転げ回った草むらの緑が
煌めく粒子を放ちながら霞んでる

君の忘れた麦わら帽子のリボンが揺れる
あの日はまだ生きている


"帽子忘れてきちゃったわっ"

なんでだろ―駆けゆく君のふくらはぎ
その瑞々しい質感の海に
いまこそ胸は 奥までじんと浸ってる


"ねぇ、空はどうして青いんだろうね?"
"うふふ、変なこと言う人(笑)"―

帰りたくなくって ゆっくり歩いて
それでも足は僕らを運んで

名残り惜しげに手を振った玄関前
それでもまた 休日が来るごとに―


この青空、しっかり見ときなよ
北国の空は陰鬱だからな

なによそれ、嫌味のつもり?―

「違うともさ」僕は笑った

君はあの日の空に架け合った夢
もう忘れちゃったのかな

それでもあの日たしかに 2人の夢は
僕の語りだした 水色の夢は

田舎町の1人の少女を
そっとやさしく包んでいたのだ


24/04/27 07:17更新 / はちみつ



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