ポエム
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あなたの胸の灯火、淡雪のような愛
雨上がりの朝―

この神聖な始まりのような冷気に厳粛な気持ちになり、濡れた芝生から生まれ出たようにしとやかだった髪に、この胸は震えて。

純真なひたむきさが充ち充ちているようだった、雨露のような瞳の潤いは。

もしかしたらあなたと再び逢うことは叶わないかもしれないと、晩秋の朝の風をまた抱きしめ。

ひとえに祈る―遥かなる海の、降りしきる小雨の、その一滴一滴をどこまでも優しく受け入れる、そんな温かい青のようなあなたであり続けてほしいと。

たとえばあなたがいつの日かに、夜の名もなき寺で座るかのような謙虚さで祈ってくれるかもしれないことを想うと、僕は、微細で精緻な悦びがこの胸に浮かぶのを感じる。それは引き波が残す、銀の泡立ち(泡たち)のよう。

僕は恐れる。ふくよかだったあなたのあの胸から、幾万の吐息とともにあの日々が、折々の季節へと溶けていってしまうことを。あなたの胸の残り火が―想いの欠片が―、遥かなる時の風にかき消されてしまうことを。

冬枯れの大地にそっと憩う淡雪のような、淡くも煌びやかな愛よ。あなたへの思慕よ。僕はその気配のさなかから、今日という日を始めるのです。

23/10/04 17:27更新 / はちみつ



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