ポエム
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「君はどうしてこんな田舎町にいるの?」
「ここはいつか、あんたが帰ってくる場所さ」登校途中のわたしを噴水広場で呼び止めて、名前も知らない褐色の肌のおじさんは言う−「あんたの目と口元を見れば分かるんだ」

いいえ、わたしは今朝も早起きして祈ってたんだ、雪の舞う厚い灰色の雲の向こうへと、”この上なく切なくって壮大な夢を生きれますように”って。

学校では眠たい先生の話を聞いて少し寝ちゃったけど、学校から帰って祭りの松明の準備をしていると背筋は伸びた。薄明かりのなか、近所の男の先輩のたくましい背中に襟元を正しながら、わたしはやはり胸のなか問いかける−”このわたしが、この町の「希望の光」になっちゃダメですか?”

暖炉の焔が揺れている。ただ静かに見入っていた。いつかはわたしも、この焔のような気高い精神性を身につけよう。そうしてわたしは、自身めくるめくドラマを生きながらも、世の人たちをどこまでも慈しむようにして過ごすのだ、この厳冬に和やかな温もりを投げかけてくれる、あの厳かな太陽のように−

朝が来ると、やはりまた雪だった。窓辺の梢に止まった小鳥と目が合うや、小鳥はすぐに飛び去ってしまったけれど、彼女は"君は"と空へと呼びかけていた―君はどうしてこんな田舎町にいるの?その翼があれば、世界中どこへだって行けるだろうに。

裸の梢が寂しそうに空へと伸びていた。粉雪が侘びしくも美しいトーンを高めていた。そしてそんな中、彼女の青い物憂げな瞳が淡い光に揺れる。

それはこの世界の神々しいワンシーンの1つだけれど、彼女はまだそのことには気づかない。青春よ―
23/09/29 19:22更新 / はちみつ



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■作者メッセージ
1年半ほど前に投稿した思い入れある作品(いまは非公開)を改稿しました☆♪

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