それが内面的なものになればなるほど、微細な感覚を言葉に置き換えることは難い。

私秘的な沈黙を煌めく言葉に変えようとしては、金を銅に変えてしまうヘマを繰り返す。

遠い彼方へと焦がれるような眼差しの、ただその淡い純粋さを伝えたいのに、出来上がるのは既存の概念で塗り潰された黒鉛のような代物で。

雪のような純白を求めて力むほどに、文化という名の堆積物が言葉の上に重なってくる。あの本で読んだ言葉。あの人が使っていた言葉。

自分の感情を表しているのか、それとも他人の言葉を切り貼りしているだけなのか、もう分からない。

真っ白な紙を前にした折の凛とした孤高は薄れてゆき、猥雑な人間（じんかん）にまみれている自分にげんなりする。

内面と文章の乖離はどうしようもなく目の前にあり、僕はただその前で、流通しかけている当の"詩"を、幼子のように力無く眺めていることしかできない。

そうして僕は、"内面とどれだけ照応しているか"ではなしに、"文章としてどれだけ完成されているか"に心を配り校正をする。

僕であって僕でない何かは、そうして世界へと開かれる。

■作者メッセージ
あるいは文章を書くとは、自分ではない何かに変身することだと、そんな風に開き直るべきなのかもしれません。ですが自分としては、こういう青臭い（？）文学観も、また持ち続けたいと思うのです。…といいつつ、最近詩らしい詩が書けていない自分。そんな自分に奮起を促す意味合いも込めて、この文章を書きました（笑）