ポエム
[TOP]
ベレー帽の詩人
絵を描いているわけでもないのに
彼はベレー帽を被っている
ここはスターバックス
渋い面持ちでコーヒーをすする彼は
"なかなかいい味出してるだろ?"と言いたげだ
向かいには20過ぎとおぼしき青年が1人
老人はゆっくりと、その口を開いていた―



生まれてこのかた80年
憂いも悩みも慌ただしさも
いまは水平線の向こう側
何を憂いていたのか
どうやって悩んでいたのか
何をして1日を過ごしていたのか
みんなみな、忘れちまったよ

でも詩だけは、いまも書いている
ネットに発表させてもらっている
嫁さんにも見せてもらってるんだけど
それはネットのみんなには内緒なんだ
だって恥ずかしいじゃないの(笑)
何が言いたいかっていうとだな
とにかく詩ってやつは面白いってことさ

詩を書いてると日常ってやつが
奥行きをもって見えてくる
奥行きって言っても深みじゃないぜ?
僕も若い時分はキンキラキンの芸術詩に憧れた

でも40手前で気づいたの
何気ない日々に、ちょっとした言葉の彩りを加える
僕はそんな風にしか詩を書けないんだって
でも同時にまた思ったのさ
それでいい、それで十分だってな

驚くほど身が軽くなった
背中に羽が生えた気がしたもんさ
その日僕は知ったんだ
日々の記憶のその最中を
自由自在に飛び回る悦びを

言葉を彫刻のように彫琢する必要なんてなかったんだ
ちょっとだらしないくらいの方が
みなを和ませるということだってある
それ以来僕は
気ままなペインターのように詩を書き続けた
いまも、書き続けている

君よ、詩はいいぞ!
自由な詩は、心を自由にしてくれる
固定観念に囚われることだって減る
君はちょっと固くなりすぎているように見える
とりあえず一杯、コーヒーでも飲みなさい
勘定は僕が払うからさっ

23/08/26 18:07更新 / はちみつ



談話室

TOP | 感想 | メール登録


まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.35c