ポエム
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熊の少女と我が娘
熊のぬいぐるみを抱きながら
君はその頬を紅く色づかせていた

店頭に並んだ林檎を眺めていると  
あの夜の情景が淡くなる


休日の午後3時―

それは緩やかに引き延ばされたような時間だ

店頭の光はどことなく無機質に見える
ジーッという音が聞こえないままに聞こえてくる

その均質な光源の下
あたかもその対比のように
林檎はかくも艶やかに色づいている

外には粉雪が散らついていて
帰途の車中では冬がこの胸をノックするだろう

来る聖夜の気配へと
このいま僕はゆっくりと歩を進めているのだ


絶え間ぬ牡丹雪にくるまれているだろう
遠い遠い北国の熊の少女よ

君が再び地上の光に出逢うとき
我が娘もまた1つ大きくなるのだ

うららかな川面に鮭が映える、跳ねる
幾筋もの光に、彼女は目を細める

その日まで―


厳かに暖を取る悦びよ

聖夜には牡丹雪が降るだろうか

きっと降る
きっと降る

そうして我が娘の
やはり頬を紅く色づかせた娘の
その永遠で美しい背景となってほしい

23/08/26 14:44更新 / はちみつ



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