ポエム
[TOP]
夏の終わり
季節感の凡庸なわたしは暦で夏が
遠のいて行きつつあることを知る

力なく鳴くアブラゼミよ
お前は本当に力なく鳴いているのかい

いいのだ わたしはただ
象徴としての夏の終わりに生きたいだけと
この貧相な胸で積乱雲を抱きすくめるよ  

幾筋もの陽射しを抱擁するお前を
やはり抱擁する我が胸に寄せる、
永遠のように淡い煌めきよ
わたしはその淡さとともに秋へと溶けたい


帳が降りて一羽のコオロギが鳴き始めたら
それ以後世界はずっとずっと秋なのだと思う

濡れ落ち葉たちが一個のイガグリと出逢い
寄り集まる茶のモノトーンの艶よ

そのしとやかな健気さを蒸留したい
そうして凛々しい少女剣士みたいに生きれたらなと

わたしは午後の懐かしい光に泳ぎながら
ひっそりと営まれゆく大地を想う

秋雨に湿った土の温かみを両脚に抱く至福よ
わたしは栗の木立の合間をしとやかにくぐり抜け
ベージュのような原っぱに出てさすらうのだ

そうしてどこでもないような場所を目指して
澄んだ瞳で物憂げにひんやりとした風を受け止めるのよと

そんなことを想いながら
フッと静かな笑みを溢している

23/08/24 04:23更新 / はちみつ



談話室

TOP | 感想 | メール登録


まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.35c