ポエム
[TOP]
愚直な本の虫
もう何十回と、その本を読んでいる。とある社会学の本を。しかし、じゃあその本を要約してみせてよと言われても、私は口ごもるしかない。

高校の折、現代文は得意であり不得意だった。マーク式では、校内で二番目になったこともあり、かなり得意だった。しかし記述となると成績は反転し、赤点のことすらあったほどだ。上手い作文なども、一度たりとも書けたためしがない。

頭の中に秩序だった、整理された形で理論や物事を仕舞うということができないのだ。結果、部分的なロジックや表現の型だけが蓄積されてゆく。そんな私を、人は「一見賢そうに見える愚か者」と呼ぶかもしれぬ。

それでも私は、相も変わらず書物に齧り付き続けるだろう。新鮮なロジックや表現に出逢ったときの胸の高揚といったらない。そして、既に既知となったそれらを、馴染みのガムを噛むように味わうときの至福といったらない。

愚直な本の虫―それが私だ。書き手という師に師事することで、私はまた、凛とした謙虚な心地にもなれる。そうして私は、日々知の森に―鮮やかで深く、そしてまた優しい森に―学び続けて行くことができるのだ。これを幸福と言わずして、他に何と言おう?
23/06/25 11:38更新 / はちみつ



談話室

TOP | 感想 | メール登録


まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.35c