ポエム
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暖かい季節の贈り物
どうも素直になれないなと、フッと笑う。もうじき夏が来るというのにこの胸は、冬を思い返しては襟元を正そうとする。

元来気が緩みがちでのんびりとしており、どちらかと言えば明らかに夏の側の人間なはずなのに、冬の絵画に埋め込まれたかのように厳しい朝を歩こうとするのは、やはり屈折した前半生ゆえだろうかと、またフッと笑うのだ。

それでも昨夜には蛙の合唱が、胸をえもいえぬ澄明さへと開いてくれたのだった。和やかさという、暖かい季節の贈り物を添えて。

昼間に水田を見ると、山々が逆さに映って霞んでいる様をユーモラスだと思う。それはきっと、おおらかでのどかであるということそのものの持つ愛の顕現だ。

蛙の合唱も、そしてまた蝉時雨も、まるで大自然の唱える念仏のようにして耳に響いてくる。そのリズムに溶け入るほどに僕の身体は世界へと延びてゆくのだ。

たまにはベランダに出て、夏風に吹かれながら大地を巡ろうじゃないか。
23/06/16 19:29更新 / はちみつ



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