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どうのこうので人は性格
彼女がマスクを外した瞬間、「アッ」と思った。彼女の口ははっきりと分かるくらいに斜めだった。

50人に1人、いや100人に1人くらいかもしれない、それくらいの曲がり具合だった。でも、こう言ってはなんだけど、彼女の魅力はいささかも減じなかった。

それどころか僕は思ったのだった―「こんなに(個性的で)チャーミングな人だったんだ」と。

コロナあるある。いつになったら終わるんだと思っていたら、気がつけば(ほぼ)終わっていた。なんだか遠い夢のよう。彼女もいまはもう、職場にはいない。

彼女が教えてくれたこと。それは、どうのこうので、やっぱり人は性格ってことだ。

150センチ手前とかなり小さいのに、大きく見える姉御肌の人だった。にもかかわらず、同世代(彼女は当時43だった)の男を律儀にさん付けで呼んで立てていた、そのギャップがツボだった。

ちょっとガサツなところもあったけれど、それが逆に親しみやすさになっていた。完璧じゃなくたって、至らなさこそが人を惹きつけることだってある(短所は長所)と、そう教えてくれたのも彼女だ。

もう彼女はいないけれど、彼女はいまも僕の胸にいる。





23/06/11 06:01更新 / はちみつ



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