ポエム
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「結晶歌」から離れて
溢れ出そうな慕情を結晶化させること―
それだけをひたすら、考え続けていた気がする

胸の中の天秤が「冷」の側へと傾き気味ないま振り返ると
よくああまで感傷的になれてたなあと思う
残り火にせっせと薪を焚べる日々だった

けれど元友人の彼女への想いの丈も
またその周縁に湧き立つ叙情の煌めきのようなものも
このいま、もうみな語り終えてしまったのだろう
彼女は僕の―こう言うと恥ずかしいのだけど―"詩神"の座から
いつのまにか降りてしまっている

それでも世界で1番大切な人であることに
このいまも変わりはないんだけど

ともあれ僕はホッとしている―のみならず
"もうあんなに頑張って詩を捻り出さなくっていい"
その事実がなんだか、眩しい希望にすら見える

苦しかった
本当に苦しかった

けれど―
けれどたしかに彼女へと
僕は想い捧げるようにして詩を書いた

その記憶を、僕は墓場まで持っていくだろう





いつか恋人が出来たとして
僕はふたたび「結晶歌」へと向かうだろうか

たぶんもう、向かうことはないと思う

慕情をカチっとした構造に落とし込むことに
少なくとも僕の力量では、そこまでの意味はない―

それが僕があの経験から得た、多大なる教訓だ

天へと伸びやかに歌うように―

新たに愛する人ができた日には
そんな詩(うた)を歌ってみたい






23/06/09 18:35更新 / はちみつ



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