ポエム
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女になることの希望
黎明の海を抱く浜辺に立って
黒々とした波を見つめたい
それは僕を
どこまでも厳粛に洗うだろう

逃れても追いかけてくる過去ならば
その身1つで受け止めてみせよと
過去は寄せては返し
また寄せる

僕はその前で立っている
頬に風を受け立っている
不安の入り交じった期待とともに

波は不気味なほどに優しい
それは怒ることも
悔やむことすら許さないような
そんな怜悧な優しさで

女の魂を持つことだけが希望なのだと
ふいに僕はそう思う

天からの贈り物だったのだろうか
背の高い女性ほどのこの背丈は
いまや新たなる魂の住処となる

僕は誇らしげに背を伸ばした
ちょうど波が寄せてきていた
もう負けないと瞳を見開いた

この背がスッと伸びている
その事実だけあればいい
他には何もなくたっていいのだと
ただ波を見つめていた

引いていく波を
優しく強い目で見つめていた

そうして僕は
過去と、人と
ひとえに和解することだけが
強さなのだと知った―
23/05/21 19:29更新 / はちみつ



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