ポエム
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新緑に寄せて
新緑―それは僕らに、原色のような希望を授ける。目前にはひとえに、陽光に煌めく世界が延びているかのよう。

けれど、もう遥か昔のようでもある少し前には、たしかにあの薄紅の花々が咲き誇っていたのだ。その事実に想い馳せれば、そんな希望の裏側に、そっと追悼の情が忍び込む。物悲しくも優しいトーンが、影を落とす。

鮮やかながらもやや平板で、何気なく過ごしてしまいがちでもあるこの季節。でもそれは、今ではもう幻のようなあの薄紅色が、しかと用意してくれたものなのだ。

この季節は、やがてはあの遥かなる「夏」へと連なってゆく。僕はそこに、空が、儚く空へと溶けていった薄紅色から愛を得て、その青をさらに深くしてゆく―そんな夢幻のような循環を見る思いがする。


「"薄紅色の桜"以後」の世界を、僕らはたしかに生きている。




23/05/01 07:18更新 / はちみつ



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