ポエム
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モスバーガーに首ったけ―20歳の夏の夜
京都に住んでた大学時代
モスバーガーに首ったけ
マクドとは対照的な
緑の落ち着いたMのロゴ
蛾のように吸い寄せられ

毎夜のダブルバーガーに
コーラ、フライドポテト
健康志向のモス≒健康的
なんて方程式を
微塵も疑わなかった20の夏

同志社の横のツタヤの前
金閣寺の近くの店
賑やかな西院の、やはりツタヤの近く
日毎に場所は違えど同じモス

見もしない映画の雑誌なんかを買って
油分に微睡み思い巡らす栄華盛衰

講義前のキャンパス
行き交っていた人の群れ
女学生の肌に笑顔
煌めいていたほどに儚くなって

この和やかな夜にさえ(だからこそ)
世界はのっぴきらない速度で走る

"アカデミー賞、おめでとう"の祝杯
空しく響く夜空は満天
目を細めて振り返る後方
碧眼の美女が腰をくゆらせ踊っている

人でごった返す街頭
流れ来るヘッドライトの光
ぼんやりとすべて流れるままに任せながら
もう誰も思い出さなくなった君を
モノクロの寂しそうな君を思い出す
そんな夜が来るのかなと

そんないまも閉じ込めたくって
懐かしいガラケーに一文字一文字
文字を打ち込んでいた20歳の夜

人が、物が、あらゆる諸々が
ゆるやかな倍速で流れていた
そんな20歳の夏の夜
喉ごしに夢見るコカコーラ―
23/04/08 11:02更新 / はちみつ



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