水色の雪
きみの町の夢を見ている。
僕の実家も川の傍だけど、きみの実家はうんと可愛らしい小川の隣にあるんだったよね。黙想するサワガニたちに見守られるように、きみは優雅に紅茶なんか飲んでさ。
お供には瀬戸内レモンのケーキ。きみは行きつけのケーキ屋さんへの小さな旅から帰ってきたところで、わずか20分ほど前にはきみは、愛らしい石段の下に開ける、どこまでも広がる家並みに焦がれながら吹かれていたんだ。
ヒマワリみたいと言ったって似合うきみだけれど、冷気のさなかに咲くパンジーはもっときみにふさわしい。
いつもいつも上気していたようなまあるいほっぺ。発熱していた朗らかな夢。それはこの街の鋭角的な冬すら、瞬く間に御伽の国の冬のように変えてしまった。
だからねえ、シャーッて車の走行音なんてそれこそ、愛らしいトカゲの這い回る音にでもしてしまえばよかったんだ。
もちろん今だからこそ、言えることにすぎないんだけど。
折に触れてきみが聞かせてくれた駅前の、瀟洒な通りで凛っ、ときみが咲きますように。
季節を問わず走っているとの、冬枯れのデザインされた小さなバス。街路樹の梢越しにトコトコ走るバスを見ては、伸びやかに広がる空の水色に吸い込まれる。生きるってそういうことなのさなんて言ったら、ちょっとカッコつけすぎかな。
小さな小さな町にいながら、なにもかもとともにあるようなきみで、そんなきみであってほしい。
夏にだってきみの頬は、しっとりとした夢に包まれるんだ。水色の雪のような肌触りをきっと、きみは風に感じることができるから。
ずっと、きみのことが好きでした。
26/01/14 18:41更新 / はちみつ