切り株の夢
きみの町の夢を見ている
僕の実家も川の傍だけどねえ
きみの実家はうんと可愛らしい小川の隣にあって
黙想するサワガニに見守られるようにきみは
優雅に紅茶なんか飲んでさ
お供には瀬戸内レモンのケーキ
行きつけのケーキ屋さんへの瀟洒な石段に吹く風に
きみは家並みを慰撫しながら吹かれていたんだ
いつも凛々しかったきみが弱いはずなんてない
夢見るように朗らかだったからこそ震えてしまった
ちょっと乾いたこの街では
田舎町の大地の土の
そのやわらかな茶へと沈んでいくだろう鐘の音は
きっと深い海の色で
その狭間できみは
どんな初夢を
モコモコの子熊の夢なんてどうだい
今だから言うのだけど
きみの小さな胸が大好きでした
北風に手がかじかんでも
曇り空に気が滅入っても
父母の逞しい背中越しに
夢はきみの瞳を染める
冬が深まると時の流れは大きくうねって
あの石段がケーキの階段になる
甘やかな章
息を切らして雪掻き分ける
厳しい章
人間子熊に冬眠はなく
息を呑むよな白銀の
海原のような大地をきみはゆく
ときにはコロコロと転がるのもいいね
ころころころころ
煌めく雪粉を振り撒きながら転がっていく
カチカチの湖(なんてあるかい?笑)の上をツルルと滑れば
スケーターたちの羨む視線にきみはスーパーアイドルさ
日が落ちかけると陽だまりみたいな懐かしい湖面
きみは遠い夏の甘やかな
ちょっぴり気だるげでもある昼下がりの夢を見る
ほんのりとさみしげな視線を木立の合間に送りながら
ラララと吐息を空の青へと運ぶように
きみはうたう
たそがれるきみでもあってほしい
なんて僕の身勝手な願いさ
切り株の上にちょこんと座る
そんなシロツメクサより可憐なきみが
しっとりとした夢を見ることが叶いますように
どうかきっと叶いますように
その隣に座るのが
僕の一番の夢でした
25/12/23 20:07更新 / はちみつ