河原町デビュー
昔はもっぱら街が好きで
雑踏を見るだけで目を輝かせたものだった
どんな人生を歩んできたんだろう?
この人は、あの人は
中にはもちろん20歳前後の女の子もいて
そんな子を見ると逆に"明日"が広がった
それは僕自身も20前後だった京都時代のこと
"河原町デビュー"という言葉も煌めいていた
中高生の女の子たちのオシャレが眩しいというより
なんだか逞しかった
我が身はといえばユニクロの
マネキンのコーディネートそのままの上下
彼女たちはこの日の自分をどれだけ思案し
そして夢見てきたのだろう
そう思うと厳粛な気持ちにさえなって
仁和寺近くの閑静なアパートに居を定めたものの
住み始めるやすぐさま寂寥に苛まれ
逃げるように街に繰り出し続けて
あちこちのレストランにも
奢るからと何十回も友を呼び寄せ憂いを晴らして
1人になればカフェでコーヒーをガブ飲み
ピカピカのパン屋でパンをどっさり買い込んでは
アパートで何度やけになって一気食いしたことやら
ある日のこと
収まらない腹痛にもんどり打って
それが徐々に収まっていって
ちょうど収まりきった頃
窓から淡い橙の光が射し込んだ
なんて穏やかで夢のようなんだと
外に出て夕陽を見つめては呆けていた
そんな夢の続きを見るかのように
今の僕は静けさを愛している
もう20年近くも前のことだ
25/12/19 06:12更新 / はちみつ