ポエム
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ドラマのための暗がりは卒業


今度の今度こそは
軽やかに生きることができるだろうか

気づけばグルグルと回る情念に乗っ取られていて
それらをカタチにしないことには気が済まなかった
でもそれは半ば呼び寄せたモードでもあった

踊り狂う負の情念に身を任せるのが芸術だと思い込んでいた
暗から明への劇的な推移を描き切り華のデビューを飾りたかった

でもいま振り返れば
すべてが安っぽく思えてくる

何よりも決定的なのは 僕が
それが作品ありきの仮構されたドラマであるにもかかわらず
日々のドラマの必然的な象徴だと思い込んで疑わなかったことだ

ほんとうナイーブだったなと思う
きっとそれだけ
切なる想いを描き連ねている(!)
との思いが強かったんだろう

冷静になったいま思う
作品は作品
生活は生活
なのだと

たとえば小説にはなりそうにない
日々の些細な情感の揺らぎに価値がないわけではけっしてない

逆に
生活に根ざしていない幻想性に価値がないわけでもないはずだ

ありのままの日々の想いこそ芸術の母胎だ(!)
なんていうのは
それこそナルシシズムの現れなんじゃないか

いずれにせよ
日々感じてきた切なる諸々を
そのまま数珠繋ぎにすることなんて土台不可能だったんだと思う

小説を書くとき人はいわば
小説のためだけに設えられた空間を泳ぐのだろう
つまりは日々の切なる想いを全部込めることは
たぶんできない

構造やリズムが強いてくる制約の中で
それでも少しでも豊かに詩情を込める

何かを足せば
何かは引かなくちゃならない
胸の中の抒情の天秤
あれやこれを置いては戻し
別のシーンでまた置いてみたり
その都度その都度の試行錯誤

さながら奮闘記を見るかのように
そんな過程を愛らしく眺めながら書くことができたなら
きっと苦しまずに小説ってやつが書けるはず

詩情を込めた小説を
やっぱりまた書いてみたいな

だけどもう
ドラマのための暗がりは卒業
それは自分を苛むだけだから



25/08/10 17:05更新 / はちみつ

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