青を抱きたい
月光に
海原ゆらゆら、深夜2時
だなんて
実際に海原を見てるわけじゃ
ないんだけど
海風に白のカーディガンを巻き上げられて
まるで風に吹かれる蝋の火ね
なんて私は思った
なだらかな丘の家々の合間に
ひっそりと咲いていた白の紫陽花を覚えてる?
あの朝がもし雨上がりだったとしたら私たち
もしかしたら別れてなかったかもしんないよ?
なんて
今日も私は小さな
小さな小さな世界で生クリームを織り続けていたわ
街路樹たちが夏風と戯れていた今朝にだって
私は一人
燃える季節の記憶を綺麗に畳みたくて
晩秋のように静かに口をつぐんでは手を
いつもいつも輝ける青に
町も私も抱かれていたんだ
もちろん
あなたも
それなりの強さで吹きつける風が水色のようだと感じた日に
私は初めて店の前の通りを瑞々しいって思ったの
薄緑色のワンピースの裾を
私は彼に捲(まく)られるままにしていたっけ
その朝も私は水色の風に吹かれてパティスリーへと出社した
あなたは新緑の煌めきそのもののように私の前に現れた
私の馬車はあなたのキラキラした瞳に引かれて
魅惑的な街をしかしやけに静かに走り抜けた
あちらのカフェに
こちらの水族館と
あなたに付き従う小さな雫のように
ねぇでもわたし
ホントは
お行儀のよい淑女でもなんでもなかったの
しおらしい女の子でもなんでもなかったの
雨音を聴きながら見た夢が私を
あの丘の紫陽花の白へと誘い続けるの
紅い椿のようにしっとりとしていた
雪がしなだれ落ち続けているようだった
ねぇ明日こそ私
伸びやかに瑞々しく生きてみるわ
水色の風に吹かれる雲のようであれたらな
もしいつかあなたに逢ったとしても
リボン付きの量産型ファッションなんてしてあげないんだからっ
夏蔭を想っています
それは夏の懐のようにあたたかで
それでいながら夏を抱いているよにおおらかで
青を抱きたい