海と花屋と、砂漠とあなたと
輝ける青に抱かれたあの町で
あなたは今も
あなたに行きつけの花屋があったらと思う
それはささやかでこじんまりとした
しかし丸眼鏡の老婦人の愛に満ちた花屋だ
その朝はほんのりと霧に覆われた朝で
それがあなたを
あの亜麻色の瞳を儚げに見せた
恋に悩める乙女のような
そんな流し目を受けたように老婦人は感じて
"いまのお姉さんには、この花がいい気がするねぇ"と言う
幾千もの孤高の黎明に
私はしかし胸の底では夢を見ていたのだろうか
そう思うあなたの目前で小さな水色の花が揺れる
あなたは水色の花と一つになりたいと思う
小さな小さなその花を両手でしかと持って
晴れゆきつつある霧のさなかを
陽に輝く住宅路へと歩み出したいと
あなたはいままで
海から拒まれた砂漠で目を伏せていたんだ
その純白の衣装を痛ましく
止むことのない砂風に吹かれるままにして
あなたのあの控えめな胸が象っていただろう
白の生地の哀しいまでにやさしい張力を想う
あなたのことが好きでした