ポエム
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海と花屋と、砂漠とあなたと



輝ける青に抱かれたあの町で
あなたは今も

あなたに行きつけの花屋があったらと思う

それはささやかでこじんまりとした
しかし丸眼鏡の老婦人の愛に満ちた花屋だ

その朝はほんのりと霧に覆われた朝で
それがあなたを
あの亜麻色の瞳を儚げに見せた

恋に悩める乙女のような
そんな流し目を受けたように老婦人は感じて
"いまのお姉さんには、この花がいい気がするねぇ"と言う

幾千もの孤高の黎明に
私はしかし胸の底では夢を見ていたのだろうか

そう思うあなたの目前で小さな水色の花が揺れる

あなたは水色の花と一つになりたいと思う

小さな小さなその花を両手でしかと持って
晴れゆきつつある霧のさなかを
陽に輝く住宅路へと歩み出したいと


あなたはいままで
海から拒まれた砂漠で目を伏せていたんだ

その純白の衣装を痛ましく
止むことのない砂風に吹かれるままにして

あなたのあの控えめな胸が象っていただろう
白の生地の哀しいまでにやさしい張力を想う


あなたのことが好きでした









25/06/06 07:54更新 / はちみつ



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