いつだって夏とともに
あなたへの愛が胸の深い場所から
留まることなく湧き出してくる
輝ける青に抱かれたあの町の
ほんのり霧模様の朝を想う
淡い朝日
町角の花屋
あなたは儚く夢見るような
水色の花を買うだろうか
恋人と別れて以来の
あなたの静かなる日々を想う
絶え間ない早朝の孤独の記憶はあなたへと
張り詰めた尊厳を寄せて引くことがない
あなたは巨大な巻貝の洞で
深緑の風を受け続けてきた
いまあなたは緩やかに朝へと
海に抱かれた大地の朝へと
静かにその白い身体を運びつつある
今日はそんなあなたの憩いの夏の日
輝かしい昼が訪れた
霧はすっかり晴れていた
それでもあなたは
"また一つ歳を取りました"と同僚と笑う
昼休憩には歳下の友と軽いランチを
コーヒーチェーンで若い娘にささやくソプラノ
薄紫のシャツにウインク
取り合った手を涼しい風が吹き撫でていく
薄緑をしていたようにあなたは思う
夕刻になればあなたは一人
夕焼けを蝶となって泳ぐような
一人分の食事を作るあなたの所作
冷蔵庫を開けるとまた一つ
世界が開ける音がする
生き生きとした生活の香りを漂わせた
あなたはそんな女(ひと)でした
あなたの瞳を彩っていた亜麻色は
それでもあなたを雫へと変えて
哀を夢見る秋雨のように
深い森の湖へと
そっと触れさせるかのよう
叶うことならあなたの胸に
そっと吹き込む夏の夜風に僕はなりたい
海も砂漠も越えて
その胸に幾万もの星の煌めきを伝えたい
やっぱり僕はあなたには
いつだって夏とともにいてほしいから