壁が厚くて泣きたくなるけど
「彼女いるの?」って、そう言いながら悪戯っぽく覗き込んできた君の瞳の潤いを、僕はそれこそつい先ほどのことのように思い出す。それはもう4ヶ月も前のこと。3ヶ月前に部署が変わると、君はどこか他人行儀になってしまった。といっても横の部署で、君の視界には僕が多々映っているはずなのに。
君は僕にささやかながらも好感を持ってくれてたんじゃなくて、一緒に仕事してたから愛想よくしてくれてただけなのかと思うと、えもいえぬ哀しさが込み上げてくる。
すれ違う折りの、物を見るような君の視線。不思議だけれど、暖房の近くで温まっている折りなんかにこそ思い出されて、君の無関心は氷みたいにこの胸の底へと沈んでいく。
年齢の壁。国籍の壁。壁が厚くて泣きたくなるけど、なんとか語学の勉強をがんばっていこう。か細い糸のようなせつない想いに、全身を預けるように。