届け
1番長く通った娼館のページを眺めていて、「あっ!」と思った。娼館に通い始めて最初に相手をしてくれた女性が、店からいなくなっていたのだ。
彼女にはコメントがなかった。それはつまり、彼女と寝て帰った後、彼女をプッシュする文章を書こうーそう思った男が1人としていなかったことを意味する。
娼館に勤める女性は、1にも2にもルックスが大切ーそんなことは当たり前なのかもしれない。彼女は写真とは大違いの、一言でいって弛んだ身体の女性だった。正直、だまされたと思った。だから僕は彼女へのコメントを書かなかった。
でも、彼女はなかなかに知的な女性だった。女性にありがちなように、少し話が長くなるきらいはあるものの、ダラダラとなりそうだなという手前で止める、その手際というかバランス感覚を、僕は素直に好ましいと思った。主観と客観のブレンド具合も見事で、北九州はちょうどよい都会なのーそう言う彼女の言葉は清らかな水流のようにこの胸に辿り着いて、まだ移ってきて間もなかった僕は、明日への希望が瑞々しく湧き出してくるのを感じたものだった。
その後僕はすぐに、あどけない雰囲気を持った女性に鞍替えしたから、けっきょく彼女とはそれきりだった。頭はいいのに情緒は不安定らしく(そうは見えなかったけれど)、手首には傷もあった彼女。コメントがつかないことに自信をなくしたのだろうかとか、客に容姿をなじられショックを受けたのだろうかとか、上から目線もいいところながら、気づけばそんなことをグルグルと考えてしまっている。
今にして思えば、彼女に罪などなかったのだ。そもそも店の都合だったかもわからないし、そうでなくとも、彼女は生きるために必死だったーただそれだけのことなのだ。
もう届くことはないだろうけれど、声を大にして叫びたい。容姿が人の価値を決めるなんて、そんなことがあるはずがない。ゲスの言葉になんて一銭の価値もない。コメントがなかったのは、どいつもこいつも馬鹿だから。もちろん僕も大馬鹿だった。
この今となってあなたの得難さ、噛み締めている有様で。詩作のことを「いい趣味ねぇ」と返してくれた、あなたの真心。いまだこの胸の奥底で、優しく逞しく揺れている。そのことに今、気づきました。