距離を抱く
やっぱり、人と話すのっていいね。それも、世間話のような軽いものじゃなくって、懸命に心通わせようとし合う、そんなひたむきな対話がいい。
もしかしたら僕が不得手ということもあるのかもしれないけど、人は人と一心同体になることなどできないことを思えば、そこには必然的にーある種のー齟齬が生まれる。何がどう理解されなかったとか言語化する以前の、ちょっとした表情のニュアンスや返事のトーンから"あっ、いま丸っと伝わりはしなかったな"ーそんな直感とともにもたらされる、ザラつきのような感触。もちろん、逆も然り。
伝えることも受け止めることも、こんなにも不器用にしかできない僕(ら)。不完全な僕ら。
でもだからこそ、彼女も僕も、それでいながら頑張ってるんだっていう当たり前が胸にスッと馴染んできて、「よしっ、明日からまたー互いにーがんばろう!」って、そう襟を正すことができるんだ。
同じ世界を生きている、というよりはむしろ、違う世界を生きてる2人の束の間の交信ーなんだかそんな、心持ちがして。
正直言うと、それにしたってちょっと距離をー大きくー感じたのも事実。いままでのめり込んでたのは振り返ると、やっぱ多分に幻想が混じり込んでいたのかな。
"僕にとって彼女という存在は何なのだろう?"と問いかける日々は過去になり、今は"僕は彼女にとってのささやかな存在でいられさえすれば"と、この胸にストンと収まってきた関係性。
燃えるような恋もいいけど、こんな穏やかな恋(?)もいいなぁと。
ひとえに距離が、尊く思える。