ポエム
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蜉蝣(かげろう)
眩すぎる光に目を眩まされて
輪郭を正確に掴むことができないでいた

その胸は核弾頭にしか見えなかった
お饅頭なんて喩える余裕などなかった

その腰は妖い女豹のそれに見えた
柳なんて喩える人の気が知れなかった

すべてはつまるところ
若かったからだと思う

そのありのままの姿を
いまなら掴めると思う

ちょっと自分を外から見るようなゆとりを持って
行きつ戻りつする波に身を任せられるはず

特別といえば特別だけれど
ありふれてるといえばありふれてる

いわば"ふつうな特別"ーそんな按配へと
堅石のようなこの心も時の流れに彫琢された  

今日も街の片隅では哀しげな瞳が
そんなありふれた欲情の群れを捌いている

生々しくがさつな欲情を
蜉蝣(かげろう)のように抱き止めている

何が彼女たちをそこに辿り着かせたのか
そんなことなど微塵も考慮されぬままに

彼女たちはどこへ向かってゆくのだろう
彼女たちの切なる願いは何だろう

街頭を吹き抜ける早春の風に
そんなことを薄ぼんやりと思いながら

ちょっぴり大げさに
語られぬ歴史ということを考えた

今朝起きると、しっとりと雨が降っていた
それは彼女たちへも等しく降り注いでいるのだと

ともに街を呼吸していることの不思議を想う
いまだ"街の片隅"に行ったことはない


24/03/05 09:13更新 / はちみつ



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