ポエム
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君への手紙
あの田舎町の
人の気配がまばらだったり
あるいは途切れてしまうところだったり
そんなところが不安で仕方がなかった

その町の中でも田舎の職場に就いて
侘しさのさなかを行ったり来たりしてる君
大丈夫かい?
なんて余計な心配

分かってる
ミルクを注ぐフェルメールの絵の女のように
君はあの町にしっとりと溶け込んでいた

片や僕は地元なのにまるで風来坊で
人にも田園にも落ち着く術を知らなかった

君は人の姿をした錨だった
君だけが僕を繋ぎ止めていた
あの小さな町の
たとえば木漏れ日の公園のような情景へと

ただの友達なのになに言ってるの?と
そう君は笑うだろうか

あの町の空の上には何があるのか
いまもふと、そんなことを考える

あの空の下で、だだっ広い空の下で
気丈に生き抜いた果てに射し込む光を
君とともに見つめる遠き明日

それだけをこの胸の底から眼差していた
たとえそれが仄かな仄かな希望だとしても


皮肉だね
君ではなく都会(まち)を選んだいま
僕はかつてないくらいに幸せで

ピッタリの靴があるように
ピッタリの街だってあるんだな

大阪、京都、そして地元の三重
ボタンを掛け違えたような場所を潜り抜けて
ようやくこの街に辿り着けた

そうして
別れ間際に君と約束した再会の日を
湖面のように澄んだ気持ちで見つめれている

大好きだった君から離れることで
僕は逆に幸せになってしまった

そんなことをこうして長々と伝えてしまう
こじらせた僕を笑ってほしい

24/02/28 03:57更新 / はちみつ



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