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彼女との友人関係の復活
 年に1回、喫茶店なんかで2時間ほど語り合うだけ。つまり僕らが時を共にするのは、1年にほんの2時間だけ。それにもかかわらず僕はそんな関係を、「深い付き合い」だと言い切ってしまいたい。
 もっともあくまで、それは僕の胸中の勝手なプランで、また彼女が雲隠れしてしまわないとも限らない。2年ぶりの電話は拍子抜けするものだった。返信の途切れた理由は「あらゆることに疲れていたから」というもので、だったらそれこそ、彼女がまたそんなモードになってしまわないとも限らないと、僕はいまからハラハラしている。
 北九州に転居するにあたって、意を決して彼女に、(結果として)背中を押してくれたことへの感謝と別れの言葉を綴った手紙を出したら、数日後に彼女から電話がかかってきた。彼女は「連絡取り合うことにしよう、その方がお互い安心できるじゃん」と言ってくれた。悦びにでんぐり返ってしまった僕は、今年の秋に故郷でお茶する約束を取り付けた。
 結婚する気はないという彼女は故郷で、おそらくはずっと1人で気丈に生きてゆくのだろう。たとえ一生友人のままでいいからその傍にいて、それこそ仕えるようにして生きていきたいと、50くらいで故郷に帰ることさえ想い描いた。そうすればより頻繁に逢えるし、恋人未満といえどもやはりそれなりにベッタリとした関係になれるんじゃないかと、この胸はときめいた。
 いまはちょっと落ち着いて、彼女とはあくまで尊敬し合う友人でい続けようと、そう思っているところで。というのは北九州、すごく自分に合っているというかもう、ほとんどピッタリじゃんってくらいに気に入ってしまって(トカイナカな感じの按配が)。そして思っているのは、誰といるかってことが大切なことは言うまでもないけれど、僕にとってはどこにいるかってことも大切―それもかなり―ということ。もっと言えば、僕はもう若い時分のように、"この人といさえすれば他のことはどうだって構わない"なんて先鋭的な感覚は抱けなくなってるのかもしれないな、と。そんなわけでいまは、彼女以上に北九州って街にときめいてる状態―なんか変わった人みたいだけれど(苦笑) 
 そんなわけで、やはり当初の予定通り、北九州に骨埋めるつもりで生きていこうと思っているのだけど、それでも彼女への気持ちが鎮まってしまうということもまた、やはりないだろうと思う。叶うならば、それこそ最期の日を迎えるまで、毎年彼女に逢いに故郷に帰るつもりだ。こっちで彼女が、彼女以上に大切だと思える彼女ができたとしても、それでも逢いに帰りたいと思う―大切な大切な、唯一無二の友人として。そんな切なる気持ちが、そしてまた、会えない分その人について想いを巡らせる日々が、年に2時間の関係をどこまでも深くする、深海のように深くする―そう信じて。
24/02/17 09:14更新 / はちみつ



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