ポエム
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一回的な生
<批評対象作品>
ダンデライオン
https://www.breview.org/keijiban/?id=11762

うーんと、考え込んでしまった。人に目一杯、これでもかというほどに尽くしてきた。それなのに"振り返れば孤独"とは、一体どういうことなのか?そんなことがあっていいものかと、行き場のない怒りすら胸には湧いてくる。

しかし、ほとぼりを冷まして考えてみるならば、語り手のような生は、この世界にそれこそ星のように存在しているはずである。

誠心誠意人に尽くしたところで、彼/彼女の胸に愛を刻印できるとは限らない。逆に、飄然として、何物(者)にも頓着しないような人が、どうしてだか皆の思慕を集めていく。あるいは、自分の話にいつも笑い転げてくれていたのに、ときにしんみり語り合ったのに、離れ離れになるや一切の便りも寄こしてくれない。人と人との関係性、それはあたかも、人智を超えたメカニズムによって駆動されているかのようである。

だからこそ僕たちは、語り手のような人に出会ったとき、たとえば「自分を愛せない人は人を愛することはできない」などという、そんな紋切り型の正論をひけらかすべきではないのだ。彼/彼女が愛を得られなかったのは、ひとえに偶然ゆえであったかもしれないのだから。

そしてそれと同じ理由で、僕はこの作品の一般性を信じない。"自分の気持ちを捨て"ることが、まさにほかでもなく「自分の気持ち」であるような、そんな人格の存在への想像力を、読み手は持つべきではないだろうか?そうしてどこまでも人へと寄り添い続け、ついには本物の愛を獲得してしまう―そんな生もまた、この世界には、やはり星のように存在しているだろうことを、僕はこの作品から逆に感じた。

その意味で、"自分を殺しても誰も幸せにならないのに"という一行は不要だと思った。あくまで自身の痛みの個別性に寄り添う姿勢を貫いてほしかった。もっと言えば、そこにこそ生というものの、かけがえのない一回性の感触があるはずであり、そこからこそ、再起のための力も湧き上がってくるのではないだろうか。
23/11/28 08:17更新 / はちみつ



談話室



■作者メッセージ
最近批評にはまっています(笑)B-REVIEWの様式を真似て書いてみました(汗)

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