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日曜の手紙
アイデンティティって難しいですね。もう37になったというのに、僕はいまだブッレブレで。主役を張ろうと熱情的な人格を演じてしまうほどに、なんだか本来の自分から遠のいていくよう。

考えてみれば、これまでの人生でリア充になんてなったことなかったし、"満ちたりた非リア"な自分になんのかんので満足してきたのでした。なのに30を越えてから僕の胸はわめき出しちゃったんです―「リア充になりたい」って。

それについて、僕はこう思ってました―自分を客観的に見れるようになったからこそ、内面に浸っているだけだったかつての自分が痛々しく見えて脱皮したいって思ったんだって。

でもそれはやはり反動だった。客観的に見ているようでいて、その実、いわゆるスクールカースト的な発想に汚染された偏った見方だった。

考えてみれば、物静かでも妙に存在感のある人っていますよね。僕の職場でも、数人ですがたしかにそんな人たちがいます。そしてそのうちの1人を、可憐な野花のような6歳下の彼女を、挨拶を交わすだけの仲ながら、僕は深く深く尊敬しているんです。

聴こえてくる彼女の口ぶりはいつも謙虚で、そして同時にまた、少女のような新鮮な悦びに満ちているのです。僕の思いなど彼女はつゆ知らないだろうし、仄かな恋心も既婚の彼女に伝えるわけにはいきません。

それでも、そんな思いも想いも、この胸の中たしかに灯火のように揺れている。その揺らめきの妙のようなものこそが、アイデンティティというものを再び立ち上げるための、その端緒となるのではないか。いずれにせよ、明日になれば、僕はまた彼女に会えるのです。
23/11/05 10:17更新 / はちみつ



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