ポエム
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スタバにて
もう30を越えてるというのに
キミはまるでそよ風を
衒いもなく駆ける少女
ショッピングモールへと僕の前
秋の気配のさなかズンズン引き離され

お約束のスタバ
出来合いのりんごのタルト
それがこんなにもおいしいのは
ハツラツとした笑顔に白い歯や
主張しない控えめな胸に
そしてしっとりとした黒髪が
キミという女(ひと)を象っているから

打って変わって
ややぎこちなく話し出すキミ
水の音(ね)を聴くよに胸かたむけて
キミの瞳に健気なひまわりが咲いていて…

キミの唇がうっすらと開かれるたび
その魔法は綿雲のような言葉を引き寄せる
1つ1つがあどけなく短い
沈黙―
そして笑い合う僕ら
また沈黙―
ゆるやかに探る次の言の葉
優しい落ち葉のよな声色で、キミに被せて

「蝶が飛んでるみたいだね」
昼光色の店内をキョロキョロし始める彼女
僕は笑った―「幸せを司どる、透明な蝶だよ」
2人の笑い声が店内に咲いて

"いっぱい話せたね"とキミ
雲散ゆるやかに
微笑ましいしとやかさが尾を引いている
じんとした緩やかな紅潮の只中
カフェラテの湖面に浮かんだ儚げな三日月月

さあ行こう、僕らの黄昏へ―
23/10/10 12:51更新 / はちみつ



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