その一
の時、「君はどの部活を考えいるの」と声を掛け
られた。小柄なだらしなく見える寝ぐせの経った男の子だった。
新しい学生服が大きすぎて、その下の身体との間に隙間があり
すぎる保持度にだぶついていた。痩せすぎの彼もグループでな
く、一人でいたからだろうか、透の視界に全く入っていなかっ
た。急だったので驚いてしまい、うんと返事を返してしまった。
しかし、ぎこちなく親しげな笑みを浮かべたその顔では、あま
にもはみ出した歯茎が鮮やか過ぎる紅色を誇っていた。何か、
一番向き合いたくない人がやってきた様な印象を透は受けた。
にこにこしながら、気弱そうな笑顔を浮かべているのを見ると、
そこに自分とおなじ匂いを嗅ぎ取り、意地悪な気持ちが湧きあ
がてきた。にこにこしながら透も、「僕は部活に入るつもりは
ないんだよ」と答えた。「そうなんだ、僕も君と」とその君と
というのを強調して相手は続けた。「僕も君と同じなんだけど、
お母さんが中学に行ったら、部活も入った方がいいよって言う
んだ。僕も勉強だけしているより、部活に入った方がやはりい、
いかなって思うんだけど、この中学、男子はほとんど運動部し
かないだろう。だから迷っているんだよ」その口どんどん喋り
続けていた。「友達関係をつくる勉強にもなるし、やはり部活
は大切だと先生方も行っているし」そう僕も思うからと言うの
を遮って、透は、僕ちょっと図書室に行く必要があるからと、
その話を止めさせてしまった。そうなんだとまた笑顔を見せる
と相手は、じゃまたねと言って、一人で机に戻ってしまった。
友達関係を学ためにも部活は入った方がいいよと言われるのが、
透は嫌だったのだ。もちろん、もう図書室に行っている時間な
なく、透も自分の机に一人座って、残りの時間を待っているし
かなかった。早く授業が始まらないかな、その方が落ち着くの
にと、教室中にこたましているように感じられた同級生の声か
ら逃れたくて、そう思った。
。
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