伊澄優2
「優ちゃんってさ〜…」
「ん?」
ふと、友達の美香ちゃんが首をかしげた。
「あの、目が怖い先輩のこと好きなんだよね?」
「うん!!!」
私の勢いに押されて、美香ちゃんが苦笑いを浮かべた。
だって、普通にイケメンじゃん!優しいし!
そう言えば、更に苦笑いされた。
「い、イケメンかどうかは分かんないけど…」
優しいのは、分かるな。
そう言ってほっぺたを赤くした美香ちゃんに、目を丸くする。
まさか。美香ちゃんも、先輩が。
「か、陰緒先輩のこと、好き……なの?」
「…………えっ!?」
ぼんっと顔を赤くする美香ちゃん。
ドクドクと、心臓がうるさく動く。
「………気には、なってるの。」
冷水を頭から浴びたような感覚。
親友と、同じ人を好きなんて。
美香ちゃんは、カツアゲから見ず知らずの陰緒先輩に助けてもらったこと。
心配だからと、家の近くまで送ってもらったことなんかを話してくれた。
「……でもね。」
「え?」
ふわ、と笑った美香ちゃんがそっと目を閉じる。
「私は、優ちゃんみたいに大好きってわけじゃないし。
ちょっとした気の迷いというか。」
えへへと笑った美香ちゃんが、ほっぺたをポリポリ掻く。
幼なじみだから分かる。
美香ちゃん、嘘ついてるんだ。
「……違うよ。」
「え?」
「気の迷いなんかじゃないよ。美香ちゃん、先輩のことちゃんと好きだよ。」
ぼっ!と、また真っ赤になる美香ちゃん。
やっぱり美香ちゃんは素直だ。
「私は、美香ちゃんの為に身を引いたりしないよ。」
「…優ちゃん…」
「でも、応援は、するよ。先輩、凄い鈍いしね。」
美香ちゃんは目を丸くして、くすっと笑う。
そして、少し顔を赤くして私の目を見つめた。
「じゃあ、私も諦めたりしない。優ちゃんにも、負けないよ。」
「うん。」
「でも、私も優ちゃんのこと応援するから。」
うん。
そう言った私は、少し涙声だったかもしれない。
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