川内零1
「川内さんって、なんか近寄り難いよね〜」
「わかる。何考えてるか分かんないし。」
私が小さい頃から言われ続けてきた言葉。
それについては自覚はあったし、その陰口を気にしたこともなかった。
下手な馴れ合いで深める、絆という名の自己満足。
それが、私には理解が出来なかった。
ある小学3年生のある日、私の上履きがなくなった。
次の日には、消しゴムがなくなった。
初めは可愛かった嫌がらせも、次第にエスカレートして。
幼いながらに、考えた。
どうしたら、やめてくれるだろう。
そればかりを。
ある日、誕生日にお母さんから貰ったお気に入りのストラップを、小川に投げ捨てられて。
グズグズと泣きながら小川でストラップを探していた時。
「……何してんだ?」
今ほど腐っていない目をパチパチさせて、こちらを見ている陰緒に出会った。
久しぶりに向けられた悪意のない目に、涙は溢れて。
私はしばらく陰緒の前で泣いた。
陰緒は、必死に探してくれた。
ずぶ濡れになって、ドロドロになって。
結局、ストラップは見つからなかったけど、代わりに何か大事な物を見つけた気がした。
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「川内」
「何?黒田くん。」
私たちの距離は、少し開いてしまったけれど。
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