黒田陰緒1
「おはよう」
色男の爽やかな朝の挨拶に、周りの女子が黄色い悲鳴をあげた。
この色男、『黒田 翔』は、オレの実の兄貴だ。
ちなみにオレは、『黒田 陰緒』。
……オイ、そこのお前。
今、「暗そうな名前wウケるw」って思ったろ。てか言ったろ。
オレは兄貴と比べると、髪の色は真っ黒で地味だし、目つき悪いし。
それに自分で言うのもなんだが、オレはクズだ。
クズの中のクズ。
本人がそう言ってんだからほっといてほしい。
毎朝、対照的な兄貴と登校って何の拷問なの?
後ろの女子ども、「あれ兄弟ー?全然釣り合ってなーい!」とか言ってんじゃねぇよ。
父さんと母さんに言ってくれ、そういうの。
「カゲ。俺、今日生徒会で遅くなるから母さんに言っといてくれ。」
「へいへい。」
別に、兄貴を邪魔だとか疎ましいと思ったことはない。
完璧な兄貴を持つと、勿論両親はそっちばかりを可愛がる。
するとどうだろう。
オレ自身の自由な時間がひらひらと舞い込んでくるのだ。
何それ。超おトク。超嬉しい。
全く無関心ってわけでもねぇしな。オレに対して。
誕生日忘れられてた時は、さすがにトイレ引きこもってやろうかと思ったけど。
兄貴と別れて廊下を歩く。
チラチラと向けられる嫌味な視線。
そりゃまぁ、誇り高き我が校のイケメン生徒会長の実の弟が、ぶ愛想な陰湿キャラなんだから目の敵にされるわな。
だがしかし、オレをナメてもらっては困る。
何せオレは、ものごころついた時からその類いの視線を浴びてきたのだ。
その手の耐性は嫌というほどついてる。
なんてアホなことを虚しく自己評価しながら、カラ、と教室の扉を開けた。
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