1.
私は、小さい頃から人とは少し違っていた。
それは、好きな人が自分と同じ女の子やってこと。
女の子やったら誰でもいいってわけではなかったけど。
私は彩ちゃんが好きやった。
今も、想うだけで涙が溢れるくらい好きなんやけど。
「美優紀って、なんか冬が似合うよなぁ。」
小学5年生の時にそう言われてから、私は冬がだいすきになって。
この季節は胸がポカポカするねん。
隣にあなたはもうおらんけど。
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「みるきー!今日合コンなんやけど行かん!?」
会社の同僚が、期待の眼差しを向けてくる。
私は、毎回苦笑いするしかなくて。
私が好きになる人は、後にも先にもあの人だけやのに。
「いやぁー、私は遠慮しとくわ。」
「えー!みるきーもそろそろ彼氏作らなヤバイで!」
好きな人じゃないと意味ないやん。
好きな人が好きになってくれな、意味ないやん。
フッと私の胸に吹く冷たい風。
私は変わらず、苦笑いするしかなかった。
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―『美優紀の気持ちは、嬉しいよ。……でも、ごめん。』―
私と彩ちゃんは、俗に言う幼馴染みやった。
ずっと一緒。
私は彩ちゃんの後ろをトコトコついて行って。
彩ちゃんも私を引っ張っていってくれた。
中学3年生のある日、私は抑えなきゃならない想いを、告げてしまって。
この、胸を焦がす甘くて切ない気持ちを。
好きやって。だいすきやって。
伝えたけどダメやった。
彩ちゃんは、私から目を逸らして。
その瞬間に、私達の関係は幕を下ろしたんや。
告白してから10年が経って。
変わらず燻り続ける想いが、私の心を焦がしていた。
「…はぁ…。」
溜息と一緒にでる白い吐息。
どこで何をしてるのか。
それすらも、今の私には分からんのやなぁ。
「帰ろ…。」
「君今1人??」
「え?」
不意に声を掛けられて、軽く振り向く。
そこにはチャラチャラした男の人が2人立ってて。
やばい。
本能がそう告げた。
「1人やったら俺らと遊ばん?」
「後悔はさせへんでぇ?」
2人がじっくりと私の身体を見てニヤリと笑う。
ぞわっと背筋に寒気がして、返事もせずに去ろうとした時。
「逃げんなって。」
パシッと掴まれる手首。
やめて。彩ちゃん以外に触られたくなんかないのに。
バッと手を振りほどいた瞬間。
―ガリッ!!―
男の人の頬を、爪で引っ掻いてしまった。
みるみると変わる、男の人の顔。
何も言わずに振り上げられた手。
ギュッと目を瞑った瞬間。
「何男が寄ってたかって女の子いじめてんの?」
会いたくて会いたくて仕方なかった人。
10年振りに合わさった視線。
彩ちゃんは、少し戸惑った顔をした後私から視線を逸らした。
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