夢の国のレビン

ここに、いつの頃からか言葉を失った少年がいました。


その夜、夢を見た。

夢はしょっちゅう見るけど、その夢はへんだった。

ミョウにリアルで・・・・・・。


ボクはひとりで野原を歩いていた。

そしたら目の前にとつぜん、洞窟があったんだ。

どうしよう・・・ こんなとこに入らなきゃいけないの?

べつにいいじゃん、

こんなとこ入んなくてもこのまま野原を行けばいいじゃん。

いつものボクならもちろんそうしたさ。

でも、ここはぜったい入らなきゃいけないって、なんかすごくそう思うんだ。

だから思いきってその穴の中へ一歩を踏み出した。

真っ暗でとってもこわかった。

引き返したいけど出来なかった。

白いキモノの女の人がいたらどうしよう・・・ 大トカゲの住み家だったら?

想像はボクの心臓を突き破って、数秒後にはボクはきっと死ぬんだ。

ふと、前のほうで何かが光った気がした。

もしかすると外へ出られるかも?

一目散に走り出した。

そしたら外にはちがいないけど、いままでのとこと、ちょっとちがってた。


川のほとりに何かいる。

イヌ? カバ? ウシ? なんだ?

もうちょっとそばに行ってみよ・・・

ツノだ・・・ 死んでるの?

「ふぁ〜 ん? なんだオマエ・・・」 (ビクッ)

「へんなカッコだな、クンクンクン・・・ ハ〜ン さてはオマエ人間だろ」 (・・・・・・)

「なんでここにいるんだ?」 (・・・・・・)

「どっから来た?」 (・・・・・・)

「オイ、なんとか言えよ」 (ううん ううん ダメダヨ、ボクは・・・ ・・・ 声が出ないんだ、

紙とえんぴつがあれば話せるよ)

ボクは必死でそのことを伝えようとした。

「なんだ、オマエしゃべれないのか? ふん、んなもんココにはない・・・

もう、とちゅうで起こしちゃ困るじゃないか! もう一度寝なおし、寝なおし!」

(・・・・・・)

「あ〜眠れない、目が覚めちまった」

「オマエ、ハラへっただろ、ちょっと来いよ」

そのコは川の上をピョンピョンと渡って、むこうの木のほうへ行った。

ボクがグズグズしてると、

「オーイ、早く来いよ! ・・・だいじょぶだって! 落ちたら死ぬだけさ」

(そんな・・・ よく言うよ。 だけどなんて透き通った水なんだろう。

見てると吸い込まれそうだよ。 ・・・そうさ、きっとボクはここでおぼれて死んじゃうんだ)

じっと水をのぞきこんでたら、なんだか勝手に足が入ろうとする。次には水の中にいた。

ドキドキしながらなんとか真ん中へんまで進む。

(もうちょっと・・・ もうちょっと・・・ あっ!)

小さな岩の上でとつぜん足がすべり、あわや水の中へ・・・!

と、それより早くそのコの手がボクの手をつかんだ。

「ホレ、はやく」

そのコがひっぱってくれて、なんとか向こう岸に渡れた。

(ありがとう・・・ キミってちっちゃいくせに力あるんだね)


「レビン! おはよー! 今日もいい天気ね」

「よう! ラビ、なんだ、そんなに持ってちゃ降りるの大変だぞ」

「平気よ、このくらい。 ・・・あっ ひゃ〜〜!」 「ホレみ、いわんこっちゃねぇ」

誰か木のてっぺんから落ちた!

「あーあ、しっぱい、しっぱい、あー チェリーが・・・」

ボクの足元にリンゴみたいなのがころがってきた。

「あ、ありがとう、キミ。 そうだ、これあげる。落っこったやつじゃない
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