ストーカー事件
文化祭を翌日にひかえたその日、1日中準備でその後、最後の練習。
「じゃこれで終わります。明日は本番なので、みんなセリフ忘れないように!」
(あー疲れた もう早く帰って思いっきり眠りたい) 途中までは一緒だった、
なっちゃんとえみちゃんに別れ、ひとりになった。
これはいつものことだから、どうってことないんだけど、今日は違ってた。
あたしは歩いてて、誰かの足音に気づいた。
なにか変。
あたしが歩調をゆるめると、相手も遅くなる。
速くするとむこうも速くなる。
(ヤダ はやく帰んなきゃ)ひっしに走った。
そしたら何かにつまづいて、その場にひざまづいてしまった。
そのときはじめて振り返ったら、むこうから男が話しかけてきた。
「ねぇ待ってよ、そんなに逃げなくてもいいじゃない。きみ、名前なんていうの?
きみの友達がフウちゃんて呼んでたね」
「…」 「ねぇきみのことずっと見てたんだ、今度つきあってよ、一度でいいからさ」
だんだん近づいてくる。
(はやく逃げなきゃ)そう思うのに足がすくんで動かない。
「イヤ!」
そいつの手があたしの服にふれようとしたとき、急にドカッって大きな音がして、
そいつが倒れこんできた。
(え なに カバン?)
その時、だれかの声がきこえた。
「逃げろ はやく!」
「涼くん!」
みるとそいつを、しっかりつかまえてくれている。
「なんだよこいつ、はなせよ、チクショー!」
(クソー なんだよコイツ ジャマしやがって、もう少しだったのに)
「それは残念だったな、でも、あんたにはわたさない」
(なんだこいつ?)
そしてそいつは、涼くんの腕をムリヤリふりほどいて、一目散に逃げていった。
「オイ 待てよ!」
涼くんが後を追いかけようと立ち上がったとき、彼の腕から血が出てるのに気づいた。
「涼くん、血!」
「えっ、あっ…」
「イヤ こんなにどうしよう…」
「あいつナイフ持ってたから」
「どうしよう、お医者いかなきゃ!」
ハンカチでおさえたけど赤くそまるだけ。
「キャー 傷口あいてる!病院いかなきゃ でもこんなんじゃ歩いてなんて行けないし…
そうだ!
おかあさんにクルマ乗っけてってもらおう、あたしんち、このすぐ近くなんだ!」
「いいよ、帰ってから自分で行くから」
「だって涼くんちどこ?そんなかっこで歩いてったら、みんなにあやしまれるよ。
サッ はやく」
「わるいよ…」
「なにがよ」
とにかくあたしは彼を家につれていった。
「おかあさん!病院行きたいの」
「あっ、ふうちゃん遅かったじゃない。え、なに?病院がどうしたって?」
「あっ!どうしたのよいったい!」
「おかあさん、はやく病院!クルマだして」
「う、うんクルマね…ちょっとまって」
「どうしたの?」
うしろからイクトが顔をだしてビックリしてる。
「にゃん太、ダメ!こっちきちゃ」
「イクト、タオルもってきて!」
「ふうちゃんいいよ」
「サッ、乗って」
「スイマセン…」
病院の待合室で涼くんを待ってるあいだ、あたしはおかあさんに、今日のことを話して
いた。
「被害届ださないとね」
「うん、そうだよね」
(あーどうしよう、なんでこんなことになっちゃったんだろ… 明日は文化祭だってのに)
「カレ、だいじょうぶかしらね」
「あっ」
「りょ…水沢くん、だいじょうぶ?」
「うん…あ、あの今日はどうもスミマセンでした」
「あら、いいえそんな、こっちこそ、ふうかをたすけてくれてありがとう
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