帰り道で

(うーん、ちょっといいじゃんこの子)

(せっかくトナリどうしになったんだもん、チャンスだわ。なにか話かけたいな・・・)

(ネェ、キミどこからきたの?って、ソレたしかさっき、先生いってたような・・・)

(でもなぁ、キッカケがなぁ、タイミングがなぁ・・・キミ、名前は?ってソレもさっき

いってたよなぁ・・・あーいいコトバがうかばない・・・)

「あッ、ねぇ、君、ねェ」「えッあッハイ?」(そっちから声かけてくれるなんて)

「あの、君、よばれてるみたいだよ」「ハ?エッ」まえを見ると先生と目があった。

こっちみてる。「鏡さん聞いてる?みんなの宿題、集めてきて。もうあなたの列だけよ。」

(ガーン、宿題!?ナニソレ)「ホラ夏休みのプリント、もしかしてふうちゃん忘れた?」

「えッあッそれか、ううん、ちゃんと持ってきたよ」「ハーイ、スイマセーン、

今集めまーす」

(ヤーダ、あたしってばセンセの話なんにも聞いてなかった。あーハズカシー。はじめっ

からこんなんじゃ、あたしの印象さがっちゃうじゃない)チラッと彼の方をみると、

ぜんぜん無視?

「では今日はこれで終わります。明日からはちゃんと授業ですからね」

「きりーつ、れい!」「ファーおわった、おわった」さてと、あ、あれ・・・

「ねェねェ 君 部活なに入る?」「オレ、中西健太、よろしく!」

「ねェ水沢くん、家どのへん?よかったら一緒に帰りません?」

「オレ、科学部の部長やってんだけど、実験は楽しいョ!」(オイオイ、なんなんだ、

コイツら)

「将棋部なんだけど、今、部員少なくて困ってるんだ」(フンだ、彼はぜったい運動部よ)

「ぜひ、遺跡発掘部へ!」

(イセキハックツ部?なんじゃそりゃ、そもそもそんな部あったなんて初耳だっつーの。

まったくうるさいなぁ)

「ふうちゃん帰ろう」

「うん」(まっいいか、これからチャンスはいくらでもあるさ)

・・・・・・・・・・・・・・・

「あれ、まえにいるの水沢くんだ」「あ、ほんと」(なんだ、あの子達といっしょか、

いいなぁ、あたしもあんなに気軽に話せたらなぁ)

それぞれ別れて、そのうち彼はひとりになった。

「ふうちゃん、じゃまたね!」「あ、うん、じゃね」「ねェねェふうちゃん、

チャンスだね!」

「・・・」「じゃ!」(そっかあたしもひとりか。これって、ふたりっきりってこと)

(どうしよう、やっぱ話しかけられないよ。でもこのままじゃまるで、

あとつけてるみたいじゃない。

そんなの不自然じゃん。よーし、思いきって・・・)

「あッあの」ちょっと間をおいて彼がふり返った。

「やぁたしかキミ、となりの席のエーと・・・」「かがみ、かがみふうかです・・・」

「ふうかって、どんな字書くの?」「風の香り、ミラーの鏡で鏡風香」

「へェ、いい名前だね」「そぉ・・・?」でも、それっきり沈黙。

(なにか話さなきゃ・・・)でも何もうかばない。なんか気まずいよなぁ。

何げなくまえの横断歩道をみると小さな犬が走ってく、その横からトラックが・・・

「あッ!」犬を追いかけて、とび出そうとした子を水沢君がだきとめた。

間一髪だった。「バカヤロー!」運転手からはどなられたけど、よかった。

女の子も水沢君も犬も無事だった。

その犬は向こうへ渡って、とまどったようにこっちをみてる。

(ポッケ、ゴメンネ、さっきチョコわけてあげなかったから、ポッケいっちゃいやだよ)

やっと信号が青にかわり、あたしたちも向こうへ渡った。
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