5.扉の先には
放課後。
北川と夜坂は一緒に教室を出て、階段を上っていく。
「部室ってどこなの?」
「コンピュータ室よ。あなたはまだ入ったことがないはずだけど」
「へーえ。で、北川は何部に入ってんのか、そろそろ教えてくれません?」
「…新聞部よ。部員は現在5人の、小規模の部活。…着いたわ、ここよ」
二人は部室の扉を見つめる。
「入るわよ。まだ全員は来てないでしょうけど」
北川はゆっくりと扉を開ける。
北川の周りの空気が変わった。
「あ、悠佳ちゃん!いつもより早いね…あれあれ、そちらのイケメンボーイは??もしかして彼氏ですか??」
「弥生先輩、冗談はほどほどにしないとイケメンボーイが逃げてしまいますよ~」
突然北川が素になるので驚く夜坂。
「あ、あの…これは?」
「紹介するね。部長の石田弥生先輩」
「こんにちは~」
にっこりと笑みを浮かべて挨拶した。
「こんにちは…」
「で、キミはなんていうの?」
「夜坂希依斗です。先日北川のクラスに転入したばかりで、今日は部活の見学に来て…」
「何この子!めっちゃ可愛いじゃないの!何この逸材!」
突如会話を遮り、大声で叫び出した。
「可愛い~私のタイプだわ~!」
そう言って夜坂の頭を撫でる。
「それにしても珍しいねー、12月に転入なんて。家庭の事情?」
「まあ、そんなところですかね…う"っ、いだだ!一体何のつもりなんですか!」
「ごめんよー、弥生先輩は面食いだから」
「なんですかそれはあ!?」
「ごめんごめん。あ、悠佳ちゃんと一緒に来たってことは、仲良いの?悠佳ちゃんの本性見て驚いたでしょ?」
「いえ…まあ別の意味で驚きましたが…本性は知ってましたけど」
そう、夜坂は、北川は部活内では本性を表しているということに驚いていた。
「仲が言い訳ではないですけど」
「こら、悠佳ちゃんそんなこと言わないの!きーくんが拗ねちゃうよ」
「いや拗ねませんけど…もうあだ名ついたのか」
「なんか夜坂、あなただんだん素に近くなってるけど…」
「え!?マジで!?」
慌てて口を塞ぐ夜坂。
「ふぅ~ん。陽気な姿は仮の姿…って訳かあ」
「くっ」
「まあいいんじゃない?素が出せる方があなたにとっても気楽でしょう?」
「まあ、な…ところで、他の部員は?」
「もうすぐ来ると思うよ♪」
元気良く返事する石田。
「それにしても、なんであんたは俺がここに来るのを反対してたんだ?」
「あなたにここを教えるのがちょっと嫌だったからよー」
「それ酷くないか…?」
北川はにやにやと笑った。
自分に嫌がらせをしたかっただけか、と思った夜坂だった。
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