7.歓迎会
「えー、これから新入部員の歓迎会を始めまーす。ぱちぱちぱち〜」
石田は調子に乗ったように喋る。
そこでふと、椎名が疑問を口にする。
「………先輩、歓迎会って、具体的に何をするのでしょうか」
「え?きーくんが自己紹介して、私が現部員の紹介をして終わり」
「ほんっっとにあっさりとしかしないですね…」
「当たり前よー。こんなことに時間を割いていられないわ。一人しか居ないんだし。質問攻めは後でのんびりやればいいし」
「はあ……わかりました」
それを歓迎会と呼べるのかはわからないが、とにかく始めることになった。
「じゃあ改めて、こちらがきーくんこと夜坂希依斗君でございます。ではきーくんから一言」
「え!?あ、えーと、今日からよろしくお願いします」
「よろしい。では現部員を紹介…あ、さっきやってたから1年は飛ばすねっ。さっきも言ったけど、私が新聞部部長の石田弥生。気軽に弥生先輩って呼んでね?」
「は、はい」
「弥生、希依斗君が怖じ気付いてるよー」
「きーくんはそんなに怖じ気付かなくていいってばー。で、この背の低いのが、副部長の安藤奈緒ちゃん」
「よろしくねっ♪(小声)背が低いは余計よっ」
「(無視)で、こっちのいかにもモテなさそうな男子が、東海林大佑」
「今軽く悪口言われなかったか…?えー、まあよろしく頼む」
「以上!これから6人で活動なんてわくわくするわ!そうだ!冬休みに都合合わせてみんなで遊びましょうよ。親睦会を兼ねて!」
「へー、いいねえ♪」
「わかりました」
すると、時計を見た東海林が石田に呼び掛ける。
「なあ、今は急いで新聞を完成させた方が良くねえか…?」
「じゃあパパッと仕上げちゃいましょうか。じゃ、点検ヨロシク」
「やっぱりその仕事は俺かよ…まあいいや。夜坂さん、一緒に来い」
「は、はい」
東海林はコンピュータを機動させた。
「よし、後は印刷が終わるのを待つだけだ」
印刷を開始し、ほっと一息つく東海林。
「ここに入った男子は全て女子の奴隷となるのだよ。だから家でもある程度作業しないと間に合わないんだな、これが」
「はあ……」
「まあ北川さんも椎名さんもあの2人と違って真面目だけどな。いつ牙を剥くかわからんから一応気をつけておけよ」
「はあ………心しますけど」
「…よしっ。おーい、印刷出来たぞー」
「お!見せて見せてー」
「今月も良い出来です」
新聞の完成を喜ぶ部員達。
「よし!じゃあ今日はこれで解散しますか!」
「早いけどいいんですか…?」
「大丈夫だよ。部屋はまだ使えるから、私はもーちょっと雑談するけどね。あ、次の活動は2週間後なのは忘れないよーにね」
「はい」
「では解散!」
石田が大声で言った。
「じゃ、俺は帰るわ。じゃあな」
「え、もう帰るんですか?」
「…ちょっと用事があってな」
「あ、あの、訊きたいことがあるんですけど」
「何だ?」
「耳を貸してください」
「ほう」
「(小声)何かここに居づらい理由があるんですか?」
「……………それだけか?じゃあ俺はもう行くぞ。じゃあな」
東海林は平然を装うが、明らかな動揺の色が読み取れる。
東海林は夜坂の問いに答えず、さっさと去ってしまった。
他の部員が雑談をする中、
「…夜坂君、地雷踏んだ」
椎名が一人、ぼそりと呟いた。
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