秘密の洋館へ御招待

かよそよそしい草太。
「帰ろっか……」
どういう訳か気まずい(?)雰囲気になる。
途中で別れたが、草太とほとんど話さなかった。

私は自宅(高層マンションの5階)に帰宅した。
親は帰っていなかった。
私は疲れが来て、ソファーの上で寝てしまった。

時間は午後5時を指す。
私は目覚めてふとテレビをつける。
すると、今日は2月14日だと言うのだ。
私は狐に化けられたのか、と考えると、電話がかかってきた。

「え?帰ってない?」
家の外にいた草太の母と話す。
なんでも、草太がまだ帰って来ていないらしい。
私は草太が家に帰るのを見た、というと…

「!!?」
突然、草太が目の前に現れたのだ。
「どうしたの?」
どうやら草太母には見えていないらしい。
「心当たりがあるので探して来ます」
そう言い、草太を連れてマンションに入った。
草太は何も喋らずに、ただ私に引っ張られているだけだ。
「ねえ、何か喋ってよ!!ねえ!!」
表情もほぼ変わらず、口は閉じたままだ。
(そうだ!)
私は名案を思い付き、エレベーターに乗り込む。

(ここなら…!)
私の家の玄関前に着く。
「ほら、草太の苦手な5階よ、…ねえ、何か反応してよ!!ねえ!!しっかりして!!」
しかし、何を言っても反応がない。
気づけば私は草太に抱きついて、泣いていた。
「一体どうしたの…ううっ」
私はどうしようもなくなり、ただ泣きじゃくるしかなかった。

すると、突然。
草太が消え、代わりに赤い便箋がその場に落ちた。
「これ…私が渡したものじゃん…」
中を開けて確認した。そこにはこう書かれていた。



草太へ

私はこの洋館に行くのが怖くて仕方なかった。

私は、草太は私がいないと何も出来ないって言ったけど

それは私も同じだった。

私の方が、草太がいないと出来ないことばかりだ。

ありがとう。

戻ったら、また一緒に遊ぼうね。

私の大好きな友達。

若葉



「これ…私が書いたやつ…あれ?」
よく見ると、手紙の裏に何かが書いてある。
私はその文字を読んだ。とても綺麗な字だった。



若葉へ

お手紙ありがとう。

気持ちはとても嬉しい。

でも、俺は行かなければならない。

多分あの洋館に呼ばれたのは

俺みたいな、もう死んだはずの人を

正しく導くためだったんだと思う。

俺、実は7歳のときに、心臓の病気で死んでいたんだ。

でもそんなことを忘れて現世に留まった。

大切な友達を悲しませたくなかったから。

あ、そうそう。

近い内に身内で俺の葬式をやると思うんだけど、

あんまり悲しい雰囲気にしないでほしいなあ、って。

まあ、それはさすがに無理だと思うけど、

せめて学校では、そうしてほしいなあ、と

ずいぶん無茶を言うようだけど、

そっちが悲しんでいたら、

俺まで悲しくなってきて、

そっちに戻ってきてしまうかもしれないしなあ。ハハハ。

後な、俺はこの手紙の中にいるから

会いたくなったらいつでも見てくれよ!

俺は、若葉が元気なら元気だからさ!

じゃあな!

草太



「…電話じゃないのよ、これは」
読み終わった第一声が、これだ。
私は草太のことを報告しようとマンションを出たが、草太母は既に帰ったようだった。
ある意味で人生最悪の訃報のはずなのに、思った程悲しさは溢れてこなかった。
悲しくない訳では決してないのだが、天国で元気にやっている姿を想像すると、笑いがこみあげてくる。
「…ばいばい」
自分でも聞き取れない程小さな声で呟き、
その目には涙が細く流れていた。
15/02/14 14:52更新 / 紅色ここあ
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