No.9
それぞれの方向から、水が発射される。
ここで目立つのはマズイな。
上空に加速すると、敵も後ろを追いかけてくる。
あいつら、結晶で飛んでるんか。
てことは、一生かかっても私のスピードには追いつけへんな。
このまま遠くに…
― ジュウッ!! ―
「なっ…!?」
片足が、ジワリと濡れる感覚。
火を消されたんやと気づいた。
「ちっ…」
ぐらりと体勢を崩した一瞬。
その隙をついて、敵が目の前に来る。
「っ…」
「終わりだ。Lv.6。」
額に当てられる拳銃。
引き金に、相手の指がかかった時。
「彩っ!!!!」
― バチッ!! ―
相手の手から、物凄い静電気みたいな音がして。
一瞬だけ相手が怯んだ。
その瞬間、腹を蹴り飛ばして右手を向ける。
「終わるんは、あんたみたいなやな。」
― ボッ!! ―
相手は、一瞬で消し飛んだ。
「…。」
……さっきの…まさか…
ゆっくりと、地面を見下ろす。
そこには。
「っ……山、田…?」
「彩ー!!早く降りてこーい!!目立つからっ!!」
何も変わらず、戦闘服を着たアホ山田がおった。
ストン、と地面に着地する。
「山田…お前…」
「感動の再会といきたいとこやけど、今はそんな場合やないで。」
「っ…分かっとんじゃアホっ!」
トン、と背中を合わせる。
久々の感覚に、不覚にも鼻の奥がツンとした。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「山田、覚えとったんか?」
「ん?いいや、そういうわけちゃうねんけどな。」
敵を全員倒して、目立たへんようにと制服に着替える山田が首を横に振った。
「私も、全然覚えてなくてな。こっちの世界に来たばっかりの時は。
お父さんとかお母さんがおって変な感じとは思ってたけど。」
「どうやって思い出したっ!?」
「うわっ!?なに!?」
がっ!と山田の肩をつかむ。
もしかしたら、美優紀も…。
「それが、私にも分からんねん。急にぽんっと頭に入ってきた感じやったから。
敢えて言うなら、戦闘服見た時かな?」
「…はー…」
思わずしゃがみ込む。
くそ…
美優紀も思い出すかと思ったのに。
そんな私を見て、山田が何か察したように、「みるきー?」とだけ呟いた。
「ん…」
「見つけられたんやな。それだけでも大収穫ちゃうん?」
そうやけど。
会えただけでも幸せと思わなあかんのやろうけど。
「さやか」
そう言って微笑む美優紀が頭をよぎって、胸が締め付けられる。
「…そんな、簡単なもんちゃうねん。結構キツイで。こいが自分のこと覚えてへんのって。」
「…そっか。」
私はそっと目を閉じて、小さく息を吐き出した。
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