No.8
『昔の私に…"美優紀"さんに、どうしようもなく嫉妬してる。』
…あほか。
どっちもあんたやろ。
くしゃっ、と自分の前髪をかく。
何も変わらんのに。
見た目も、声も、話し方も。
覚えてないことも、覚悟してたはずやねんけどなぁ。
誰もおらん屋上で、仰向けに寝転がる。
ほんまに、私だけなんやろうか。覚えてるのは。
やとしたら、結構寂しいよなぁ…。
ぼっ、と右手に灯る真っ赤な炎。
何であの研究者の手下達が私を狙うのか。
私を消したがるってことは、少なからず向こうの世界に戻る手段があるんやろう。
自分らの計画が潰されるのが嫌ってとこか。
「よっこいしょ。」
上体を起こすと、背筋がピクッと何かを感じたように動く。
ゆっくりと立ち上がって、素早く辺りを見回す。
「ったく…非常識な奴等やな。学校やぞ、ここ。」
カッ!
屋上の手すりに足をかけて、迷わず飛び降りる。
落下しながら、素早く状況を整理する。
この感じ…水系の能力者か。
数はせいぜい5人。
炎に水なんか、考え甘すぎるっちゅうねん。
しゆっと体勢を立て直す。
案の定、5人が私を囲む状態。
私は、周りに気を配りながら軽く頭をかいた。
前編へ 続編へ
TOP 目次
投票 感想 メール登録