No.7
「行ってきまー…す…」
家を出ると、びっくり。
彩ちゃんが家の前で待っててくれて。
慌てて駆け寄ると、「行くで。」って言いながら先に行ってしまった。
追いかけると、ちらっと私を見た彩ちゃんが「これ。」って紙袋を差し出してきた。
「?何これ?」
「あんたの戦闘服や。何故か私の部屋にあった。」
中を見ると、襟に"N"の形のバッジが付いた彩ちゃんと同じ軍服。
「このバッジ、なんなん?彩ちゃんも付けてたけど。」
「ああ…昨日話した時に、『戦闘部隊』『守備部隊』『医療部隊』の3つの部隊があるって言うたやろ?」
「うん。」
「それは、その各部隊の総隊長の証。」
「へぇ〜………えっ!?総隊長!?」
私が!?
守備部隊の1番お偉いさんやったってこと!?
そのバッジをまじまじと見つめる。
…信じらへれん…
「大丈夫やったん?私が総隊長で。」
「…まぁ、戦いに関してはいい具合にへなちょこやったな。」
「うっ…」
でも。
そう言った彩ちゃんが、ふわりと優しく微笑んだ。
「守備部隊としてなら、誰もあんたに勝てるやつはおらんかったよ。」
あ…またや。
この手は、"私"を撫でてるんじゃない。
"美優紀"さんを撫でてる。
痛む胸を必死に無視して、無理やり笑顔を作った。
「て言うか、彩ちゃんもお偉いさんやったんやな!難波で1番強かったってことやろ?」
「…まぁ、そうなるな。」
あ、しまった。
今、絶対彩ちゃんのこと傷つけた。
強いって言われるの、嫌やった?
彩ちゃんの横顔は、何を考えてんのか分からんくて。
昔の私なら、なんでも分かったんやろうか。
こんなに彩ちゃんに愛されてた、自分は。
「…。」
「渡辺さん?」
「…あかん、私。」
「え?」
「昔の私に…"美優紀"さんに、どうしようもなく嫉妬してる。」
目を大きくした彩ちゃんが、眉を寄せて前を向いた。
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