No.6
彩ちゃんが物凄いスピードで移動した場所。
それは、葉っぱが生い茂る大木の太い枝。
そこに彩ちゃんが私を降ろす。
「た、高いってっ!!」
「しっ!見つかりたいんか!?」
我慢せぇ。
そう言った彩ちゃんの笑顔は、確かに私自身に向けられてて。
なんとも言えへん幸福を感じる。
そんな時、彩ちゃんがふいに通学カバンから服を取り出した。
「って!軍服っ!?」
「動きやすいからな。」
服を脱いで、軍人用ブーツや軍服を彩ちゃんが身に付ける。
その凛々しい姿に、思わず見惚れてしまった。
「これからちょっとの間、私はあんたから離れる。」
「っ!!」
「大丈夫や。すぐ終わらせてくるから。」
ぽんっ
頭に手を置かれて彩ちゃんを見上げると、私に背を向けてて。
そして。
「っ!?」
ヒョイッ、と彩ちゃんが木の枝から飛び降りた。
慌てて下を覗こうとした時。
― シュンッ!! ―
目の前を、彩ちゃんが通り過ぎた。
足からは炎が出てて、彩ちゃんが凄いスピードで相手に突っ込んでいった。
彩ちゃんが、右手を相手に向けた瞬間。
― ボッ!!!! ―
暗いはずの夜空が、一瞬昼みたいに明るくなって。
そう思ったら、いつの間にか彩ちゃんが目の前に帰って来てた。
「す…すごい…」
「…もう、このまま話すで。」
そう言った彩ちゃんが、私の隣に腰掛けた。
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「…こんなとこや。分かったか?」
「ま、全く…ちんぷんかんぷん…で、でも、私達がこの世界の人間じゃないってことと、私が早くそのことを思い出さなあかんってことは分かった、かも…?」
「それだけ分かってたら十分や。まぁ、どないにしろ、あいつらはまた私を殺しに来る。あんたも少なからず目は付けられたやろう。やから、これからは私と行動しろよ。学校でもプライベートでも。」
くしゃ、と頭を撫でられて、思わず胸がドキドキする。
もしかして、その世界の私達って。
「…恋人、やったん?」
「え?」
「私と、彩ちゃん。」
「…さぁな。」
ふっ、と薄く笑った彩ちゃんが「帰るで。送る。」って言いながら私の手を引いた。
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